協会活動報告

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その9)

【34.褥瘡治療の実際(4)

 

 「深い褥瘡の急性期には、炎症を落ち着かせる治療が必要です」と古賀総合病院皮膚科部長の津守伸一郎先生。デブリードマンで死んだ組織を切除し、壊死組織の洗浄、抗菌剤の外用などの処置を行い、「ある程度肉が出てくるような感じになってきたら、いわゆる『ラップ療法』をやってみるといいと思います」。同病院で穴あきポリエチレンを紙おむつに貼ったものを使用して治療している様子をスライドに示しました。浸出液が穴を通っておむつに吸収されている写真を見せながら、「最初の頃のラップ療法は、サランラップだけを当てていましたが、それだと浸出液がその周りからあふれ出てきて汚かったわけです。それに対し、穴あきポリエチレンを用いることで、浸出液のコントロールができるようになっていますので、こういう方法がいいのではないかと思います」と説明しました。そして「しつこく言いますが、こうやって治療している間、大事なのはキズをちゃんと洗うこと、そして徐圧・体位交換きちんとすることです」と繰り返しました。非常に大きくて深い褥瘡が治っていく実例を見ながら、参加者は津守先生の話を食い入るように聞いていました。

 また、交換のポイントについては、「浸出液をコントロールすることが大事ですから、1回の入念な処置を11回するよりも、そこそこでもいいから綺麗にして、こまめに交換することで浸出液をためない方がキズはきれいになります」として、通常のおむつ交換時を利用することを提唱しました。

 その後ビデオや写真を使って様々な症例における治療(殿部の深い褥瘡の治療経過、黄色期から赤色期の処置、下腿の感染を伴う褥瘡の治療経過、赤色期になってからの処置、多発した褥瘡の治療、糖尿病性潰瘍に対する治療、湯たんぽやけどなど)の実際について紹介がありました。このうち、かかとにできた糖尿病性潰瘍のため、踵骨まで腐骨化した症例では、生理用ナプキンを利用した治療法が紹介され、「生理用ナプキンは逆戻りしないのが一番のメリットでサラサラしています。大きなかかとのキズですが、洗って生理用ナプキンを直接当てていくうちにきれいになってきました」と述べつつ、「これもちゃんとした被覆材の理解、そしてちゃんとしたやり方をするのであれば、こういう方法もあると思います」と注意を促しました。

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(つづく)

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その8)

【33.褥瘡治療の実際(3)

 

 「昔はラップ療法について、”最初から最後までラップだけでいい”と書いているものもあったのですが、実際は壊死組織があるときは早く除去する方が炎症が落ち着いて早く肉芽が形成されます」と、壊死組織を除去するデブリードマン(科学的・外科的)を行っている様子がスライドで紹介され、次いで外用剤、そして被覆材とスライドは続きました。津守先生の話によると、「(創傷治癒の障害を取り除き、治癒環境を整える)ウンド・ベッド・プリパレーションの概念などを考えて治療すると、外用療法というのはあまり役に立っていないような気がします。どちらからというと現在主流になっているのは被覆材で、キズを覆うものを上手に使って治っていく環境を整えていくという考え方になっています」とのこと。また、ラップだけを用いるのではなく、穴あきのフィルムやおむつなどを上手に組み合わせていく方が「実際によく治っている印象があるし、簡便で綺麗な治療法だと思います」と、浸出液の量や、症状に応じた被覆材を選択することが大事だと指摘しました。なお、紙おむつや整理用ナプキンは「”出てきた浸出液を吸い取らせ、下の方にためない”という意味では被覆材と同じ原理で、それらの開発には非常に力が入っており、日本の製品は高機能ですから、それらのものを上手に使っていくといいと思っています」とのことでした(ただし医療用品ではないので、医療用としては「モイスキンパット」や「エスアイエイド」などが認められているとのこと)。

 浸出液の量の違いによる被覆材の選択方法について、「ナカノ式褥瘡評価基準表(適切なOpWT基剤の選択)」をスライドに示しながら「浸出液の量があまりに多いとフィルムではむれたりかぶれたりしますから、直接おむつを当てる方がキズにとってはいいようです」「浸出液が減って来るにしたがって穴あきポリおむつ、フィルムおむつ・ラップなどを選んでいきます。そして浸出液があまりない時にはフィルムだけで構いません」等と説明。続いて「褥瘡ができたのではないか!?というときにどうするか?」という説明が次のように行われました。

 

(1)まずは徐圧!!

(2)ポリウレタンフィルムやラップで保護、観察・・・どうなっていくかわからない場合は観察を、「キズが深くなっていくのではないか?」というときには医師に相談し、治療。

(3)何もしないでおむつのみあてて観察

(4)とにかく治ってくるか、悪くなるかの観察を

 

 「しつこく言っていますがとにかく徐圧です。そしてこれからどうなっていくかわからない場合はフィルムを貼るなどして観察を行い、『キズが深くなっていくのではないか?これは悪いのではないか?』というときには医師に相談をしてください。とにかく目を離さずに観察をして下さい」と強調しました。

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(つづく)

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その7)

【32.褥瘡治療の実際(2)

 褥瘡の深さは初診時に決定しているものの、それを正確に判断するのはむずかしく、急性期の創傷被覆材の使用は慎重を期することや、局所療法をいろいろ変えても褥瘡の程度を浅くすませることはできないことなどの説明があった後、「褥瘡の発症初期に大事なことは、それ以上深くならないように徐圧をすることができるかどうか、ということに尽きます」と津守先生。褥瘡発症時の対応として、継続的な徐圧が非常に重要であることを強調しました。

 「どういう褥瘡の治療をやるかというと、色々な方法があります」と、スライドに次のような治療法を例示しました。

 

(例1)ガーゼ→(デブリードマン)→ゲーベンクリーム→ユーパスタ→フィブラストスプレー

(例2)フィルム→(デブリードマン)→ハイドロサイト→デュオアクティブ

(例3)フィルム→(デブリードマン)→おむつ→穴あきポリエチレンおむつ

(例4)フィルム→(デブリードマン)→手術による閉創

(例5)最初から最後までイソジン消毒、あてガーゼ

 

 その上で津守先生は「どの治療でないとけないのか、ではなく、どの治療法を選択するか、です。いずれにしても徐圧など管理ががきちんとできていればキズは必ず治ります。キズが治るのを妨げるような治療さえしなければ、どのような局所治療を行っても、生きている限りキズは必ず治ります」と栄養状態、全身状態、徐圧などの管理を適切に行うとともに、「やってはいけないこと」をやらなければ、褥瘡は必ず治るとのことでした。

 この「やってはいけないこと」の一つとして、「ガーゼを創内に入れるのはやめましょう」として、ガーゼは異物であり、それを褥瘡のポケットに詰め込むことによりポケットの壁が圧迫を受け、阻血壊死に至ることや、炎症をきたし、滲出液も増えて感染を惹起するなどしてポケットが難治化することなどを、実際にその治療を行った事例を交えながら説明すると、参加者は褥瘡を正しく理解し、適切な管理と対応をすることが何よりも重要であると再確認していました。

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(つづく)

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その6)

【31.褥瘡治療の実際(1)

 

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 古賀総合病院皮膚科部長の津守伸一郎先生による研修会は、褥瘡の治療に入りました。まず「褥瘡ケアのポイント」として、次の4点が示されました。

 

(1)何はともあれ徐圧 

(2)局所を洗う。入浴は清潔を保ち循環を良くする

(3)消毒は必要ない

(4)栄養は抵抗力・治癒力の源

 

 この中の徐圧に関し、「体位変換は体圧分散のかなめです」と述べた上で、2時間ごとの30度側臥位を基本とし、頭側挙上は30度以上あげないようにすることや、できるだけ2人で実施すること、さらに経管栄養時の椅坐位の際も十分注意することなどといった説明がありました。「経験栄養の時に褥瘡を作る方は多いです。ベッドをギャッジアップする時に『背抜き』をしたり、まっすぐ起こすのではなく少し側臥位ぎみに起こしてやることで意外と早く治ります」と写真で実例を示しながら解説が行われました。

 これに加え、車いす上での座らせ方(シーティング)や、近年、高性能のものが次々と開発されている徐圧・摩擦とずれの防止のための体圧分散寝具(エアマット)およびそのチェック方法などの紹介もありました。ただし「道具を使えばいい、というものではありません」と津守先生。道具を過信せず、自ら必ずチェックして正しく用い、褥瘡を治癒に導いていくことの重要性を学びました。

 次に「褥瘡がどのような経過をとるか、ということを理解して欲しいと思います」と前置きし、「褥瘡は必ず同じ道筋を通っていきます」と断言。実際に仙骨部の褥瘡を初診時から3ヶ月半後までたどった経過をスライドに示すとともに、先に説明した炎症期壊死・滲出期肉芽形成・増殖期上皮形成・成熟期、という経過をおさらいしながら、「薬を塗るなど何かの治療をしたら、この3ヶ月半の経過が1週間や2週間で治るということはありません」ときっぱり。そして「私たちはこのキズ(褥瘡)はこういう経過をとっていくというのが見えます。一方あまり経験がない人は『何かをすれば早く治るのではないか?ひどくならないのではないか?』と思いがちです」と述べた上で、「とにかく『一回できた褥瘡は取り返しが付かない』と思ってください」と会場を見渡しながら訴えると、参加者はそのことを肝に銘じながら聞き入っていました。

(つづく)

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その5)

 【2-1.創傷治癒に対する理解(2)

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 このように一過性の原因による急性のキズと、恒常的に続く慢性のキズという違いはあるものの、「そこに施す処置はみな同じです」と津守先生。その手当について次の4つをスライドに示しました。

 

(1)洗う(クリーン)

(2)適切な処置を施す(トリート)

(3)キズを覆う(プロテクト)

(4)経過観察(フォローアップ)

 

 さらに「キズの上手な治し方」として次の4項目を示しました。

 

(?)まずは洗ってきれいにしましょう

(?)水を怖がらなくてもよい。水道の水は充分きれい

(?)消毒剤による消毒は必要ない

(?)最近のばんそうこうや貼り薬(被覆材)は上手に使うとひっつかないため痛みが早くとれ、治りも早い(湿潤療法のじょうずな利用)

 

 この中で「(?)水をこわがらなくてもよい」、「(?)消毒剤による消毒は必要ない」に関して、「自分たちがケガをしたとき、みなさんどのように治療していますか?」と津守先生。「『水はだめ』、『お風呂に入ってはいけない』と思っている人はいますか?」と参加者に問いかけました。

 これに対し、会場から手は上がりませんでしたが、「皮膚科医として高齢者の治療に当たる事が多いわけですが、『キズを水につけては絶対だめ!』と思っている高齢者が非常に多いです。また、『消毒液で消毒しないといけない』、『キズにはクスリをつけて、ガーゼをつけるもの』と思っている高齢者も多いというのが現状です」と述べ、「消毒してキズが治らないわけではありませんが、消毒しなくてもばい菌はつきません。”より良く治す”と観点いうことで考えると、水で綺麗に洗い、汚いものを洗い落としてあげる事が大切だということを伝えていって欲しいと思います」と訴えました。

 「キズは洗いましょう!」というスライドを用い、その方法を具体的に次のように説明しました。

 

◎大量の水で充分に洗い流す事が基本。温浴、シャワー浴は効果的!(大量の食塩水、水道水でOK

◎壊死組織などを落としたいときは洗い落とす。せっけんも有効。きれいな肉芽組織面では傷つけないようやさしく扱う。洗いすぎない

◎画一的に考えず、創の状態に応じた洗い方を身につけましょう

 

 「”キズに水をつけるとばい菌が入る”と思っている人に『水道水は飲み水として飲んでいますよね。飲んでいるものにばい菌はないでしょう』と説明し、その時には納得されるのですが、家に帰ると絶対に洗わない人もいて、1週間後の再診時、術後のままだったという方もいます」と経験談を紹介する津守先生。参加者は正しいキズの理解、そして正しい治療法の習得にとどまらず、それを利用者に説明し、理解を得ていくことがいかに重要であるかを再確認しました。

 また研修会では、「創傷治癒の障害となるものを取り除き、治癒環境を整えること」として最近言われるようになった「ウンド・ベッド・プリパレーション(Wound bed preparation)」を学びました。これは「キズは必ず治っていく、治す力がある。それを邪魔するようなものがあると治りにくくなるから、その治りにくくなるものを取り除いて創傷治癒を邪魔しないようにしましょう」というもの。その具体的な障害となるものの臨床的な観察項目として、その頭文字をとった「TIME」というものがあることを学びました。

 

〈TIME:臨床的な観察項目〉

○組織─壊死または異常 (Tissue, non-viable or deficient

○感染または炎症    (Infection or inflammation

○水分のアンバランス  (Moisture imbalance

○創縁─上皮化の停滞  (Edge of 
wound-non-advancing or undermined

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(つづく)

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その4)

【2-1.創傷治癒に対する理解(1)】

 「褥瘡とは体の皮膚が無くなっていく皮膚欠損、いわゆる『キズ』です」と津守先生。その定義や種類、治り方や治し方について説明を進めていきました。

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 「皮膚は外敵から守ったり、水分や体温を調節する大切な器官の一つです。その皮膚の組織が壊れ、機能障害をきたしているのが『キズ』です。ですから、『キズ』ができると、体は皮膚を戻そうと一生懸命働きます」とスライドを示しながら述べた上で、「『キズを治す』というのは何かの治療をして治しているわけではありません。治る能力があるから治るのであって、キズの治療をしているから治るというわけではありません。ですから、治す力を上手に使って治るのを邪魔しない、治す力を上手に引き出してやることが大事です」と言い添えました。

 キズの種類について、次のようなものがあることを、写真を紹介しながら説明がありました。

 

(1)外傷などの外因によるもの・・・擦過傷(すりきず)、裂挫傷(裂けきず)、熱傷(やけど)、低温熱傷(湯たんぽやけど)、褥瘡(とこずれ)

(2)血管の病気によるもの・・・動脈硬化症による壊疽、下腿潰瘍(うっ滞性潰瘍)、糖尿病性水疱・潰瘍

(3)自己免疫性疾患・・・膠原病による潰瘍(血管炎、(2)も重複)、水疱性類天疱瘡(水疱症)

 

 「結局色々な原因でキズは起こってくるわけです。しかし、強調して言いたいのは『”皮膚の欠損”ということで考えると、キズというものは”皮膚がなくなっている”という状態に違いはない』ということです。ですからキズの治療は皆同じです」と、皮膚欠損という観点からすれば、擦り傷ややけどと褥瘡は同じであるとした上で、「違うのは原因が一過性のものか、それとも続くのか、ということです」と述べ、スライドを用いて次のようにその相違を説明しました。

 

《擦り傷、やけどなど(急性創傷)》

・・・原因は一過性

《床ずれ(慢性創傷)》

・・・原因、誘因が恒常的に続くもの(取り除けない)

・・・秩序立った創傷治癒機転の阻害・破綻が起こった状態

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(つづく)

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その3)

 古賀総合病院皮膚科部長の津守伸一郎先生による研修会は、「1.褥瘡(床ずれ)とは?・・・床ずれに対する基礎知識」、「2.創傷治癒に対する理解・・・キズはどうやって治るのか」、そして「3.褥瘡治療の実際・・・実際行っている処置法(ラップ療法を含めて)、病院と在宅・施設での処置法の違い」という流れで進められました。

 

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【1.褥瘡・床ずれとは?】

 褥瘡(床ずれ)とは、「皮膚・軟部組織の圧迫、ずれによる虚血性壊死であり、身体の一部分(特に骨が出ている部分)が長い時間圧迫されることによりその場所の血流が悪くなり、組織が死んだ状態となってしまう病気」。この長時間持続する圧力とずれが加わると、皮膚表面よりも深部の筋肉や脂肪が虚血になりやすく、壊死になりポケットを形成するため、「褥瘡は中の方から、骨の周りから起こって来ると考えて下さい」と写真やイラストによる説明がありました。

 危険要因保有度による分類として、「起因性褥瘡(危険因子保有者)」、「偶発性褥瘡(危険因子を持たない人)」、「脊損患者の褥瘡(特殊例として分類)」3つ。これに続き、圧迫の時間と壊死との関係について、”200mHgの圧迫が2時間加わると壊死が生じる”ことを、時間軸と圧力軸との関係で示すグラフを用いて説明しながら、「たった一晩、数時間でも悪化し、せっかく治ってきても、それまでの苦労が水の泡になります。ですから体位交換と体圧分散マットレスが大事になってきます」と指摘。

 褥瘡は仙骨部をはじめ、踵骨部、肩胛骨部、大転子部など、骨の突出部位におこりやすいことをおさらいしつつ、「褥瘡の全身的な要因」として、次の4項目を挙げました。

 

(1)  
食事を十分にとれない状態が続き、栄養状態が悪い

(2)  
持病(糖尿病、貧血、心不全、末期がん)がある

(3)  
やせている(皮下脂肪が減少し、骨が出ている)

(4)  
抗がん剤、ステロイド剤(内服、注射)などの薬剤を使用している

 

 特に高齢者の皮膚は、高齢化に伴い、脂腺や汗腺の機能が低下し、乾燥が進むため、皮膚の大切な機能であるバリア機能が低下し、外部からの刺激を受けやすくなるため、「適切なスキンケアが必要です」と強調すると、参加者はメモを取るなどして聞き入っていました。

 これに続き、褥瘡の病期(炎症期、壊死・滲出期、肉芽形成・増殖期、上皮形成・成熟期)や色(黒色期、黄色期、赤色期、白色期)による分類、NPUAP分類(深さによる分類)、DESIGN-P(褥瘡の重症度・経過の評価:※)などについて学んでいきました。

 

(※)DESIGN-Pについては日本褥瘡学会のホームページ(http://www.jspu.org/jpn/info/design.html)に詳細が掲載されていますのでご参照下さい。

(つづく)

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その2)

 研修会の本論に入る前に、「(褥瘡の)局所療法という話をする前にまず強調しておきたいのは、褥瘡をいかにできないようにするか?つまり予防が重要だということです。そしてもし褥瘡ができたとしても、なぜできたかを理解した上で、局所療法をしていく必要があります」と津守先生。褥瘡を治療していく上で、ベッドやマットレス、車いす、そしてクッションのようなハードウエアの整備、さらに看護・介護といったマンパワーによる体位交換、保清、栄養管理などといった「土台」の部分がしっかりしてこそ、局所治療が生きてくることを訴え、「局所療法だけでは褥瘡は治りません」と断言しました。

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 また、「点滴による栄養と、腸から摂取する栄養では筋肉合成に有意な差が生じる」という研究結果を紹介し、「徐圧や保清に加え、栄養管理も大事です。口から食べられる人はどんな点滴にも勝る治療効果があります」と食事が果たす役割の重要性を言い添えました。

 ラップ療法(Wrap Therapy)1996年、医師である鳥矢部俊一先生により考案された褥瘡の治療法で、ラップや紙おむつなどの日用品を用い、慢性期の医療施設や在宅医療の現場を中心に普及しているもの。津守先生は「創傷管理(特に赤色期以降)を浸出液のコントロールと肉芽形成、表皮化を妨げないという目的からみれば理にかなった方法だと思います。また、褥瘡に対するコスト管理からみれば、安価で有用と言えます」と前置きし、「褥瘡の治療にあたっては医療用として認可された創傷被覆材の使用が望ましい。非医療用材料を用いた、いわゆる『ラップ療法』は、医療用として認可された創傷被覆材の継続使用が困難な在宅などの療養環境において使用することを考慮してもよい。ただし、褥瘡の治療について十分な知識と経験を持った医師の責任のもとで、患者・家族に十分な説明をして同意を得たうえで実施すべきである」という日本褥瘡学会理事会の見解を示しました。その上で、「褥瘡の治療は医療行為です。万が一問題が起きたとき、責任の所在は医師にあります。ラップ療法は簡単な療法と誤解され、医師の目の届かないところで行われ、その結果重篤な創感染が見過ごされることがあります。現場の皆さんが『褥瘡とは何か?』をしっかり理解して、もし問題があるようであれば、医師としっかり連携をとっていって下さい」と言い添え、特に感染症の兆候を見逃さないよう注意を喚起しました。

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(つづく)

褥瘡治療学びました(看護・介護部会、その1)

(公社)宮崎県老人保健施設協会看護・介護研究部会は67日、宮崎市の古賀総合病院で研修会を開きました。会員施設などから126人が参加し、褥瘡(じょくそう)の予防や治療法について学びました。

この研修会は、同部会が昨年度開いた「褥瘡の予防」に関する研修会に続き、今年度はさらにその治療法まで踏み込んで学ぼうと開催したもので、会員老健施設のみならず、特養関係者なども多数参加し、会場は満席になりました。同部会の上村久美子委員長は「褥瘡の予防と治療は、それぞれの施設で取り組んでいかなければならない問題です。今日はしっかり学んでいきましょう」と挨拶しました。

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(↑挨拶する上村委員長)


講師には古賀総合病院皮膚科部長の津守伸一郎先生をお迎えしました。「今日は『褥瘡治療とラップ療法』というタイトルでお話しさせていただきます。私が医者になって26年になりますが、最初の頃と比べると、褥瘡の治療も段々変わってきました。最初はみんなそれぞれの考え方でやってきましたが、現在は体系立てて考えるような時代になり、またチーム医療として連携を取りながら治療するようになってきました。つまり現在は皆さんが仕事をされている在宅や施設などと、私達の病院とがうまく連携をとりながら、一人の患者さんを社会としていかに支えていくか、ということが重要になっている時代になっていると思います」と、在宅および施設と病院とが連携するとともに、それぞれが役割を十分発揮していくことが大事だと話し始めた津守先生。スライドには「褥瘡の予防とケアの地域連携」というタイトルと、その下には患者を取り囲むようにかかりつけ医(主治医)、病院、通所施設、訪問入浴、市町村、ケアマネジャー、栄養士、理学療法士、薬剤師、ホームヘルパー、家族、訪問看護、在宅褥瘡治療医が配置された模式図が示してありました。

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(↑津守先生)

参加者はひと言も聞き逃すまいと、真剣な表情で聴き入っていました。

(つづく)

会員施設情報更新作業中です

当ホームページの「会員施設一覧」における、各会員施設の情報の更新作業を現在行っているところです。

これは、去る419日に開催した第11回(公社)宮崎県老人保健施設協会研究大会の抄録集を作成するに当たり、県内44の会員施設より施設紹介に関する情報を提供いただき、編集・掲載したものを、協会ホームページにも反映させようと作業を進めているものです。

現在の掲載内容をバックアップした上で、新しい情報に書き換える、という手順で行っているわけですが、これがなかなか簡単ではなく、加えてなにぶん素人作業でありますゆえ、もう少々日数を要するものと思われます。

 更新完了後は、改めて当ホームページ上で告知する他、会員施設の皆様にも別途お知らせ申し上げますので、なにとぞご容赦いただき、今しばらくお待ち下さいますようお願い申し上げます。

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