協会活動報告

感染症対策学びました(看護介護部会:その6)

「ノロウイルスが感染するメインは経口感染や接触感染ですが・・・」と断った上で西田先生は、「一部飛沫感染もあります。それは嘔吐物などを処理するときに、舞い上がった空気中の病原体を吸い込んで感染するというパターンがあります。ですから処理をする際には嘔吐物に水分を含ませたり、換気をすることが大事です」と、様々な感染経路があることをイラストを用い、注意を促しました。

 ノロウイルス感染症の特徴について、まず次の5項目をスライドに示しました。

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(1)感染してから症状が出るまで12

(2)嘔吐、下痢、発熱が主な症状

(3)晩秋から冬期に流行する

(4)症状は通常12日で解消する

(5)嘔吐、下痢などの症状が消失しても34週間は便中にノロウイルスが排泄される(2日間程度は感染力が特に強い)

※症状が出る前にもウイルスは排泄される

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 このような特徴を踏まえ、「問題なのは症状が消えても長い人は1か月くらいノロウイルスが排泄されるということです。ウイルスの量は便の中が非常に多いです。トイレや手洗い場を専用にするなどの対応も必要です。また症状が出る前にもウイルスが排泄されることに注意して下さい」と指摘しました。

 ノロウイルスの治療と予防に関しては、「特効薬はなく、対処療法しかありません。また特別な予防方法はなく、手洗いやマスクの着用、そして排泄物の適切な処置を行うことで感染を予防する事が重要です。感染症じゃないものもあり、いきなり大勢の人に症状が出るような集団発生の場合には食中毒の可能性もあります。感染症であれ、食中毒であれ、そのような場合には保健所へ連絡、相談をして下さい」と呼びかけました。

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 これに続き、具体的なノロウイルス対策についての説明が始まりました。

(つづく)

感染症対策学びました(看護介護部会:その5)

 接触(経口)感染への対策について話し始めた西田先生。「接触によって身体の表面に病原体が付着しただけでは感染は起こりません。身体の中に菌は入っていません。病原体のついた手で口や鼻、眼をさわることによって病原体が身体の中に入って感染します。ということはどうすればいいかというと、とにかく手洗いです。接触感染対策にとって最も重要で基本となるのは手洗いです」と手指衛生の重要性を強調し、「石けんとアルコール1押し(3cc)を組み合わせることで、効果は1万倍にもなります」と付け加えました。なお、健康な皮膚は強固なバリアになるものの、皮膚に傷がある場合などは、そこから病原体が侵入し、感染する可能性もあるため、手袋の着用を検討してほしいとのことでした。

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 この手指衛生をいつ行うかという事については、「1処置1手洗い」と前置きし、スライドに次の5項目を示し、その順守を訴えました。

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【手指衛生が必要な5つのタイミング】

(1)患者に触れる前(入室前・診察前)

(2)清潔/無菌操作の前〈例:ライン挿入、創傷処置など(手袋着用直前)〉

(3)血液/体液に触れた後〈例:検体採取、尿・便・吐物処理など(手袋を脱いだあと)〉

(4)患者周辺の環境に触れた後〈例:ベッド柵、リネン、モニター類〉

(5)患者に触れた後(退室後・診察後)

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 次に感染性胃腸炎について、腸炎ビブリオ、病原性大腸菌などの細菌や、ノロウイルスなどのウイルス、そしてクリプトスポリジウムなどの寄生虫といった色々な原因があるとしながらも、「やはりノロウイルス、これが最強です。ノロウイルスの対策ができていれば他のものもだいたい防ぐことができます」とし、ノロウイルスに関する説明が始まりました。

 「非常に小さく消し去るのが大変。カキなどの二枚貝を生や加熱が不十分な状態で食べると感染し、人の腸で増えるため、85度から90度で、1分半以上の加熱が必要です。さらに、小さいくせに感染力が極めて強く、10個から100個といった少量のウイルスで感染が成立しますが、排泄物の中には1グラムに100万個以上もあります。またもう一つのやっかいな問題は、ノロウイルスを持っていても症状が出ない人がいるということです」といった西田先生の具体的な説明に、受講者は身を乗り出して聞き入っていました。

(つづく)

感染症対策学びました(看護介護部会:その4)

 「施設における感染対策」に関して、まず感染予防の三原則として、「”感染源”、”感染経路”、そして”感受性者”の3つが揃わないと感染は成立しません」と、それぞれ感染源に対しては治療や隔離、感染経路には手洗いやマスク、感受性者には体調管理やワクチンなどの対応法をおさらいした西田先生。「個人のレベルで終わっている限りは特に問題ありません。何が問題かというと”感染経路”、つまり周りに広げるところが問題です。感染源であってもちゃんと治療すればいいし、感受性者でもちゃんと体調管理やワクチン接種で防げます」とし、感染経路の対策の重要性を強調しました。

 そして感染を未然に防ぐ対策の1つである衛生管理について、次の6項目を示しました。

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(1)適度な温度、湿度の管理

(2)冷暖房、加湿除湿器の定期的な清掃

(3)環境の清掃

(4)共用具の衛生管理

(5)ドアノブや手すり、スイッチなど不特定多数が頻回に触る場所はアルコール消毒を

(6)汚染が予想されるときは防護具(マスク、ディスポエプロンなど)を使用

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 ノロウイルスなど消化器疾患に多い接触(経口)感染、呼吸器疾患に多い飛沫感染、そして結核や麻疹、水痘などの空気(飛沫核)感染という3種類の感染経路について述べた西田先生。「空気感染の怖さというのはどういうものかというと、例えば僕が結核を発症したとしましょう。するとこの会場の1番後ろに座っている方にも感染のリスクがあるということです」と最後列を指さすと、96人の受講者で埋まった会場には緊張が走りました。これに続き「ところがインフルエンザだと前から23列までの人が危ないということになり、接触感染だと(触れなければ)安心だということになります」との説明に、受講者はメモを取るなどして聞き入っていました。

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 これらの感染経路対策の各論に入る前に、病原体の感染と伝播のリスクを減少するために行われる標準予防策(Standard precautions)の考え方(:全ての患者の血液、汗を除く体液、分泌物、排泄物、健常でない皮膚、粘膜は、感染性があるものとして対応すること)に言及した西田先生。接触(経口)感染への対策から説明を始めました。

(つづく)

感染症対策学びました(看護介護部会:その3)

 感染対策マニュアルについて「定期的な見直しが必要です。マニュアルはあるけど古くなってしまっていると、『何のためのマニュアルか?』となります。皆さんも施設に帰ったら、定期的に見直されているかチェックをしてください。そしてそのマニュアルがどういったものか、その内容を皆で共有して下さい。”絵に描いた餅”ではいけません。一連の具体的な手順がないと新人はわからないし、何かあったときに指針がないと船は沈みます。もちろんそれが間違っていてはおおごとです」と警鐘を鳴らした西田先生。会員老健施設や特養などからの受講者96人を前に、「高齢者施設における感染症リスク」として次の6項目をスライドに示しました。

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(1)毎日長時間の集団生活、レクなど濃厚な接触も

(2)マスクや手洗いが十分にできない人も

(3)感染症にかかりやすい(免疫が弱い)

(4)重症化しやすい(誤嚥のリスクも)

(5)脱水をおこしやすい(成人と比較して体内の水分保持能が低下)

(6)結核の既感染者が多い

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 「皆さんの施設にはどのようなリスクがあるでしょうか?」と満席の会場を見渡しながら尋ねた上で、「病原体によって潜伏期間が異なりますが、感染してから病状が出るまで時間がかかりますし、症状がおさまっても、インフルエンザやノロウイルスなど、ウイルスを排出していることがあります。また『不顕性感染』といって、感染していても症状がでないことがあり、これが感染症の難しさです」と注意を促しました。

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 そして感染症対策の基本として、「微生物は無限に存在します。無菌の環境はあり得ません」前置きし、「その中で健常者や大人においては問題とならない病原体でも、免疫が弱くなった高齢者では感染すると発病しやすくなります。それでは高齢者を感染症から守るためにはどうすればよいでしょうか?」と、今回の研修会のメインテーマである「施設における感染症対策」について説明を始めました。

(つづく)

感染症対策学びました(看護介護部会:その2)

 研修はまず、最近の院内感染の事例紹介から始まり、結核や感染性胃腸炎、多剤耐性緑膿菌、セラチア、多剤耐性アシネトバクターなど、県内外における患者と職員が集団感染し、死亡者も出た事例などを示した西田先生。その中で療養型病院において患者と職員が集団発生した感染性胃腸炎のスライドを示しながら、「感染性胃腸炎は毎年流行しますので、発生することはあります。発生させない努力も必要ですが、発生してしまった時の対応の方が実は大事です。発生はしても封じ込めができるということがポイントです」、「(療養型病院では)自力で動ける患者は少ないはずです。ということは、職員が媒介ということになります」、「初動が一番大事です。この事例では最初の患者(初発患者)が出て34日後に急に増え、終息までに1か月程度かかりました」と話し出すと、会場には緊張した空気が漂い始めました。

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 医療法施行規則(第1条の11)には(イ)院内感染対策のための指針の策定、(ロ)院内感染対策のための委員会の開催、(ハ)従業者に対する院内感染対策のための研修の実施、(ニ)当該病院等における感染症の発生状況の報告その他の院内感染対策の推進を目的とした改善のための方策の実施・・・などを記した院内感染対策が定められていることを紹介し。その中で院内感染対策研修については、「チームで行うことが大事です。1人のミスがみんなのミスにつながります。研修はいろいろな知識を見直す良いチャンスです。皆さん忙しいでしょうが、定期的に行うことが感染対策への意識を向上する上で大事です。新人が入ってくる4月、そして感染症のシーズンに入る前に行うと理想的ではないでしょうか。そして『どういう研修をやったか』ということをファイリングしておくと、振り返りの資料になります」とその必要性を強調しました。

 また感染症の発生状況報告に関して、「発生自体はどうしても不可抗力というところがあります。発生してしまったとしても、その後の対応が大事です。『報告しておこられる』という問題ではありません。保健所としても重大な事象は報告してもらって、アドバイスができればいいと思います。保健所も一緒に対策を考えていきたいと考えていますので、気軽に相談してください」と呼びかけました。

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(つづく)

感染症対策学びました(看護介護部会:その1)

(公社)宮崎県老人保健施設協会看護介護研究部会は1025日、宮崎市のJAアズムホールで研修会を開き、施設における感染症対策について学びました。

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同部会はでは67日、褥瘡(じょくそう)の予防および治療法に関する研修会を開いており、今回が今年度第2回の研修会となりました。この日は会員施設や特養関係者など96名が参加しました。開会にあたり、同部会の上村久美子委員長は「高齢者の施設で働いていると、特にこれからの時期は感染ということに対して神経質に向き合っていかなくてはなりません。それぞれの施設で感染対策をしているとは思いますが、職員への意識付けを行い、職員が正しい知識を身につけてやっていくことが大事になります。今日はしっかり勉強して、各施設での感染対策に役立てて下さい」とあいさつしました。

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(↑上村委員長)

講師には宮崎県福祉保健部健康増進課兼小林保健所の主査で医師の西田敏秀先生をお招きしました。西田先生は鹿児島県私立ラ・サール学園高等学校から熊本大学医学部に進学。医師免許取得後は同学部付属病院や球磨郡公立多良木病院、公立玉名中央病院、そして宮崎県延岡保健所などで勤務された後、現職でご活躍中です。日本医師会認定産業医の資格を持ち、日本公衆衛生学会および日本結核病学会に所属されている西田先生は、宮崎大学の非常勤講師も務められており、この日はご多忙の中を縫ってお越し下さりました。

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(↑西田敏秀先生)

 「今日は長時間の研修ですが、感染症対策の基本から話していきますので聞いていただきたいと思います。また資料もたくさん用意しています。持ち帰って今日の研修の振り返りに使っていただくとともに、施設で職員の皆さんにフィードバックをしていただいて、それぞれの施設における感染対策がレベルアップすることを望んでいますので、よろしくお願いします」と、西田先生はにこやかに話し始め、研修会が始まりました。

(つづく)

岩手の次は横浜大会!

 1015日から17日にかけての3日間、「第25 全国介護老人保健施設大会 岩手」が盛岡市民文化ホール(マリオス)ほかで盛大に開催されたことは、先日紹介した通りですが、来年、つまり平成2792日から4日にかけては、「第26回全国介護老人保健施設大会 神奈川 in 横浜」が「高齢者が輝く未来へ  お洒落に!スマートな連携!」の大会テーマで開催されます。

 既に現在、大会関係者がその準備に取りかかっており、Future when elderly people shineと銘打った大会ポスターも完成しており、当協会にも送られてきました。こちらからダウンロードしてご活用下さい。

 先日も述べた通り、日々の業務の中で感じる疑問や問題点には、研究発表の題材がたくさんありますし、それらを研究する中で、疑問が解決し、問題が解消されることは即ちケアの質の向上そのものであることはもちろん、より良い研究発表にもつながります。さらに大会テーマにもある通り、「高齢者が輝く未来」に向けて、その扉を開く鍵となるかもしれません。

是非来年はその成果を披露し合いましょう。横浜でお目にかかるその日を心待ちにしています。

感染症予防研修会開きました(看・介部会:速報)

(公社)宮崎県老人保健施設協会看護介護研究部会は1025日(土)、宮崎市のJAアズム別館202研修室で高齢者の感染症予防対策研修会を開きました。講師に宮崎県健康増進課感染対策室の西田敏秀先生をお招きし、感染症に関する現状や具体的な予防法などについて学びました。

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この研修会の詳しい模様は後日連載する予定ですのでお楽しみに。

セミナー申込締め切り25日まで

 (公社)宮崎県老人保健施設協会事務長会および在宅支援研究部会が1115日(土)宮崎市のシーガイアコンベンションセンター4階「蘭玉」開催する、「介護保険改定への対応セミナー」の申込締め切りは1025日(土)までとなっています。

 このセミナーは、講師に社会福祉法人登別千寿会理事で、特別養護老人ホーム緑風園の菊地雅洋総合施設長をお招きし、「介護保険改正にどう対応する? 老健は? 特養は? グループホームは? 居宅支援事業所は?」と題し、講演をしていただくもので、来年の改正に向けて老健のみならず、特養やグループホーム、居宅支援事業所はそれぞれどういう舵を切っていくべきかについて、具体的かつ実践的な話が聞ける大変有意義な内容です。

 受講料として老健関係者は1500円が必要ですが、それ以外の方は無料で受講できます。詳しくはこちらをご覧の上、「参加申込書」により介護老人保健施設サンヒルきよたけ(FAX:0985-84-0700、担当:濱砂)までお申し込み下さい。

お疲れ様でした!岩手大会

 1015日から17日にかけての3日間、「第25 全国介護老人保健施設大会 岩手」が盛岡市民文化ホール(マリオス)ほかで開催されました。

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「雨ニモマケズ 風ニモマケズ 震災を乗り越えて めざそう 夢のある老健を」の大会テーマのもと、全国から沢山の参加者が集い、講演や研究発表、そして懇親会などを通じ、忌憚のない意見のやりとりや情報の交換をする中で、明日の老健はどうあるべきか?そしてそのために11人がどう考え、どう行動するべきかを考える上で大変有意義な大会となったのではないでしょうか。大会に参加した当協会関係者が撮影した写真からも、その盛況ぶりがうかがえます。

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 宮崎県からは32人が参加し、8人が演題発表を行ったとのこと。また4名が座長の大役を務められました。

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 さらに懇親会にて51チーム制で実施された「地域別わんこそば大会」ではサンヒルきよたけの介護福祉士黒木浩史さんが九州地区代表として出場し、見事優勝されました。

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それぞれに収穫の多い、実利ある大会であり、それぞれの職場に戻られてからの伝達講習や、実際のケアへの導入などに大いに期待が持たれます。皆様本当にお疲れ様でした。

 なお来年(平成27年)92日から4日にかけては、「第26回全国介護老人保健施設大会 神奈川 in 横浜」が「高齢者が輝く未来へ  お洒落に!スマートな連携!」の大会テーマで開催が予定されています。日々の業務の中で感じる疑問や問題点には、研究発表の題材がたくさんありますし、それらを研究する中で、疑問が解決し、問題が解消されることは即ちケアの質の向上そのものであることはもちろん、より良い研究発表にもつながります。是非来年は横浜でお目にかかるべく、今からさっそく取りかかろうではありませんかヽ(゚∀゚)(゚∀゚)

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