研修会開きました(看護介護部会:その5)

  このように感染症をめぐる様々な情報を踏まえ、疾患の種類を問わず、誰でも・いつでも・どこでも実施することが重要である「標準予防策(スタンダード・プリコーション)」について説明がありました。

 標準予防策(スタンダード・プリコーション)とは、「患者の湿性生体物質(血液、唾液、胸水、腹水、脳脊髄液などの体液、汗を除く分泌物、尿や便などの排泄物、傷がある皮膚、粘膜)を感染性があるとみなして実施する感染予防策」。その目的は医療従事者を介した患者から患者への交差感染(医療職者媒介感染)を防ぎ、患者を守ること、そして患者が保有している(あるいはその可能性がある)病原体から、医療従事者および医療環境を守ることとのこと。

 また標準予防策を実施する場面は、各職種がそれぞれの業務を行う場面の全てであり、また医療職者が病院内で行うすべての業務にその周知・徹底・順守が必須であることから、「医療関連感染のリスクがある場面だけでなく、全ての職種の業務場面で標準予防策が実施されなければならない」と強調しました。

 標準予防策の具体的な項目は(1)手指衛生の徹底、(2)個人防護具の適切な着脱、(3)呼吸器衛生・咳エチケット、(4)注射・輸液等を介した感染予防、(5)医療器具・機器等を介した感染予防、(6)環境への対策(:清掃)、(7)布製品の取り扱い(:洗濯)、(8)血液媒介病原体による針刺し・切創・汚染予防・・・の8つ。この中で特に手指衛生を順守することは、「感染制御の基本、『魔法の習慣』だ」と訴え、詳しい説明がありました。

 手指衛生を行う場面は(ア)患者に触れる前、(イ)清潔な処置・無菌操作の前、(ウ)患者の体液に暴露の危険があった後/手袋を脱いだ後、(エ)患者に触れた後、(オ)患者の周囲の物品や直近の環境に触れた後・・・の5つ。南嶋先生は、「従来言われていた『1処置・1手洗い』ではなく、『1処置2手指衛生』、つまり『処置の前・後に手指衛生』を全員で徹底しましょう」と呼びかけました。

 また、「手袋の使用は手指衛生の代わりにはなりません。個人防護具の中で手袋が最も汚染されています。処置ごとに交換しなければ手袋自体が媒体となって患者から患者へ病原体を伝達してしまいます。手袋をしたまま施設を移動しないように。そして手袋を脱いだら必ず手指衛生を!」と注意を喚起しました。

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(つづく)

研修会開きました(看護介護部会:その4)

 南嶋先生の講義は肺炎の話題に移りました。日本における肺炎による死者は年間12万人を超え、死因の第3位になり、これは全死亡者の9.9%、つまり10人に1人に相当するそうです(2011年)。さらに加齢とともに肺炎での死亡率は急上昇するとのこと。

 それだけでなく、死因第1位のがんや第2位の心疾患の患者も末期には肺炎を併発しやすいと、その危険性を喚起しました。

 肺炎の分類は従来市中肺炎(CAP、病院外で生活していた人に発症した肺炎)と院内肺炎(HAP、入院48時間以降に新しく出現した肺炎)の2つでしたが、新しい分類として「医療・介護関連肺炎(NHAP)」が加わった事が説明されました。これは、(1)長期療養型病床群または介護施設に入所している、(2)90日以内に病院を退院した、(3)介護を必要とする高齢者・身障者、(4)通院にて継続的に血管内治療(透析、抗菌薬、化学療法、免疫抑制薬による治療)を受けている・・・のいずれかに当てはまる肺炎とのこと。

 私たち老健施設に勤める者にとって、非常に関係の深いこのNHAPの特徴は、「高齢者の重症肺炎であり、予後が不良であるとともに、薬剤耐性菌感染症であるため、難治性である」と説明。昨年度の介護報酬改定で肺炎等への対応が強化されたことにも触れながら、感染制御の重要性を訴えました。

 肺炎に続き、今年発生が急増している風疹や、中国で猛威をふるっている鳥インフルエンザ、そして中東を中心に広がっている新型コロナウイルス等について画像を交えながら説明がありました。さらに、食中毒や食品媒介感染症に関して、特にノロウイルスに重点を置き、その特徴や感染経路、汚染物の処理手順などについて説明が行われました。

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(つづく)

研修会開きました(看護介護部会:その3)

  「高齢者施設は、感染に対する抵抗力が弱い高齢者が集団で生活する場。このため、感染が広がりやすい状況にあることを認識して」と南嶋先生。そして「感染自体を完全になくすことはまず不可能なので、感染の被害を最小限にすることが重要」と前置きし、感染対策は「病原体の(1)持ち込み防止、(2)感染予防、(3)拡散防止(封じ込め)」とポイントを示しました。

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 その一方で、高齢者の感染症は症状が非典型的で、炎症反応が減弱しているため、(1)感染症が気づかれない、(2)感染者の早期発見と病原体の伝播予防が困難、(3)検査室がなく、医師が常在していなければ、感染症の迅速な診断と治療が困難・・・などの特徴があり、高齢者施設における感染制御が容易でないと指摘。その上で「感染制御の基本は標準予防策の順守。感染症の有無にかかわらず、誰にでも、いつでも、どこででも、手指衛生(手洗い・手指消毒)、手袋の着脱、ガウン着用、咳エチケットなどを実践しましょう」と呼びかけました。

 また、感染症は「感染源(病原体の存在)」、「感染経路(病原体の伝播経路)」、「感受性宿主(病原体に対して免疫がない宿主)」の3つの要因がすべて揃った場合にのみ成立することから、「感染症を予防するには、この3つの成立要因のうちの、少なくともどれか1つを排除すればいいのです」と説明すると、参加者はそれぞれの施設における取組状況を振り返りながら聞き入っていました。

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(つづく)

研修会開きました(看護介護部会:その2)

  研修会の講師は社会医療法人同心会 古賀総合病院臨床検査部長で感染制御室長の南嶋洋一先生。南嶋先生は宮崎医科大学(現宮崎大学医学部)副学長や、九州保健福祉大学学長などを歴任された、微生物学の第一人者です。

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(↑南嶋先生。よく通る声でわかりやすくお話して下さいました)

 スクリーンに映し出されたタイトルは「高齢者施設における感染制御」。この「感染制御(Infection Prevention and Control)」とは、「感染症の発生を未然に防ぎ、発症した感染症を制圧すること」とのこと。感染症を未然に防ぐことは感染症の危険管理(risk management)であり、発生した感染症をどう封じ込めるか、ということは感染症の危機管理(crisis management)。このことを踏まえ南嶋先生は、「起こることは起こる。そう簡単に予防できるものではありません。(予防に加え)起こったあとにどう封じ込めるか?という2つの概念が『感染制御』にはあります」と切り出し、感染制御の重要性を強調しました。

 医療と介護の垣根がなくなってきた事もあり、従来「院内感染(症)」と言っていたのは「病院感染(症)」となり、さらに今日は国際的に「医療関連感染(症)」(Healthcare-associated infectionHAI)と言うようになったそうです。この「医療関連感染症」の定義は「病院における入院患者が、原疾患とは別に、新たに罹患した感染症、または医療従事者が院内において罹患した感染症」。入院後48時間以降、あるいは退院後48時間以内の発症で、外因性感染(感染源は患者・医療従事者および器物・環境)と内因性感染(感染源は自己)があると前置きし、「特に医療従事者および器物や環境による交差感染と環境感染を避けて下さい」と、会場を埋め尽くした参加者達に呼びかけました。

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(↑もうすこしで立ち見になるのでは?と心配するほどたくさんの参加者でした)

(つづく)

研修会開きました(看護介護部会:その1)

 公益社団法人宮崎県老人保健施設協会看護介護研究部会は518日(土)、宮崎市の古賀総合病院腎センターで研修会を開きました。高齢者施設での感染予防対策について研鑽を深めました。

 今回の研修会テーマは、同部会が会員施設に対して行ったアンケートを踏まえて決定したもので、今後は褥瘡対策やパワーハラスメントなどに関する研修会も予定されているそうです。

 開会にあたり、同部会の仮屋美喜子委員長(春草苑)は、「感染症対策は、目に見えないものと戦わないといけない苦しさがあります。自分一人では防げるものではなく、みんなの力で取り組まないといけません。今日学習したことを施設に持ち帰って実践して下さい。また、大事なのはいくら頑張っても起こるものは起こるということ。これを念頭に置いて、起こったらどうやれば終息できるかということも学んで下さい」と呼びかけました。

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 この日参加したのは会員老健施設や特別養護老人ホームの職員115人。感染症対策はどの施設も共通の重要課題とあって満席となった会場は開会前から熱気ムンムン。部会メンバーもスライド用のスクリーンを2つに増やすなど対応に当たりました。

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(続く)

エントリー開始1ヶ月前!(^^)/

 「第14回九州ブロック介護老人保健施設大会inみやざき」(1114日、15日)の演題発表エントリー開始は624日からスタート。あと1ヶ月となりました。発表を予定されている皆様におかれましては、準備のほどはいかがでしょうか?

 抄録の書式やエントリー方法などの詳細は、先日発送した「参加のご案内」に記載しています。よくお読みいただいた上で、ご準備いただきますようお願い申し上げます。

 

 

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↑これが「参加のご案内」です。

 

 たくさんのエントリーをお待ちしています。

5月23日ですアゲインヽ(^o^)丿。

  523日。この日付、毎年気になります。昨年のブログにどんなことを書いたのか?やはりそれが気になっていたことがわかります。

 

〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

 

 本日は523日でございます。この日付、よく見ると、いやよく見なくてもその関係に気付いてしまいます。

 すなわち、

523日→ 5= 2 + 3

ということです。つまり、

「月の値」=「日の十の位の値+「日の一の位の値

という関係が成り立っているわけです。このような日付は、ほかにどんなのがあるでしょうか?11日、22日など、十の位が0の日付は除く)

   110日→ 1= 1+0

    
2
11日→ 2= 1+1

    
2
20日→ 2= 2+0

    
3
12日→ 3= 1+2

    
3
21日→ 3=2+1

    
3
30日→ 3=3+0

     ・・・・・・・・・

   ・・・・・・・・・

    
5
23日→ 5=2+3

     ・・・・・・・・・

   ・・・・・・・・・

    とまあこんな感じで、他にもいろいろとありますね・・・

 

 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

 

 と書いて、あとはレクレーションの一環として、利用者の皆さんと考えてみては?などと締めくくっていたのでした。これではやはり中途半端か?というわけで、2013年の523日を迎えるにあたり、ちゃんと考えてみました。

   110日→ 1= 1+0

    
2
11日→ 2= 1+1

    
2
20日→ 2= 2+0

    
3
12日→ 3= 1+2

    
3
21日→ 3=2+1

    
3
30日→ 3=3+0

    
4
13日→ 4=1+3

   422日→ 4+2+2

   514日→ 5=1+4

     523日→ 5=2+3

   615日→ 6=1+5

   624日→ 6=2+4

   716日→ 7=1+6

   725日→ 7=2+5

   817日→ 8=1+7

   826日→ 8=2+6

   918日→ 9=1+8

   927日→ 9=2+7

  1019日→10=1+9

   1028日→10=2+8

   1129日→11=2+9

  12月・・・ (なし)

 

   

以上21の組み合わせとなり、つまり1年に21日がこの関係式が成り立つわけです(仮に上記に赤色で示した条件をはずし、11日、22日、33日、44日、55日、66日、77日、88日、99日を加えると30日になります)。

足し算だけでなく、引き算、かけ算、割り算などを用いて色々な関係式を考えてみると、1365日、けっこう数字で遊べるかもしれませんね。お試しになってはいかがでしょうか。

けいめいリハセミナーのお知らせ

  医療法人慶明会 けいめい記念病院は629日(土)1830分から20時まで、宮崎市霧島のJAAZMホール本館2階大会議室で「第1回けいめいリハビリテーションセミナー」を開きます。慶明会は介護老人保健施設サンフローラみやざき、そして介護老人保健施設おびの里を運営する法人です。

 セミナーでは、同病院リハビリテーション科医の鈴木幹次郎先生による慶明会の取り組の紹介に続き、東北大学大学院医学系研究科肢体不自由分野の准教授、田中尚文先生を講師に招き、「宮城県北西部における地域在住高齢者を対象とした認知症検診と歩行機能評価の取り組み」と題した特別講演があります。

 このセミナーはリハビリテーションスタッフやケアマネージャー、保健師をはじめ、どなたでも受講することができます。なお、参加費として一人500円が必要です。※無料になりました。

 受講をご希望の方は、「第1回けいめいリハビリテーションセミナー」から開催文書をダウンロードし、必要事項をご記入の上、ファックス(0985-36-6675)にてお申し込み下さい。

 このセミナーに関するお問い合わせは、けいめい記念病院(担当:リハビリテーションスタッフ、TEL0985-75-7007)までお願いします。

「へんだぞ?」が大事

 58日の日本経済新聞の「春秋」にSF作家にして生化学者のアイザック・アシモフの次のような言葉が紹介されていました。

「科学でも耳にするもっとも胸躍る言葉、それは『私は発見した!』ではなく「へんだぞ・・・である」。

 これはブラジル沖の太平洋の深海底から陸地でしかつくられない花崗岩が見つかったことから、そこが伝説の大陸、アトランティスではないか?というニュースになっていることに関して用いられた言葉です。個人的な見解を述べれば、「海のトリトン」の短剣に使われていた「オリハルコン」が発見されれば、間違いなくそこがアトランティスだと断定できるのですが・・・え?知らない(-_-)。テーマソングは今でも甲子園で時々流れていますね。

 それはともかく、「へんだぞ?」と思うことが、発見や発明につながるわけです。リンゴが木からポトリと落ちたのを見てニュートンが万有引力を発見した話は有名ですが、それを「ラッキー!」と思って食べてしまってたら現代物理学は大きく違っていたかもしれません。

 前置きが長くなりましたが、「第14回九州ブロック介護老人保健施設大会inみやざき」(1114日、15日)の演題発表エントリー開始は624日からスタートします。研究に取り組むのは今からでも遅くはありません。身近なところにある「へんだぞ?」を探してみましょう!そこに偉大な発見の原石が転がっているかもしれません。

 抄録の書式やエントリー方法などの詳細は、先日発送した「参加のご案内」に記載しています。よくお読みいただいた上で、ご準備いただきますようお願い申し上げます。

 

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↑これが「参加のご案内」です。

 

 たくさんのエントリーをお待ちしています。

認めること・見留めること

 「人間の持つ性情のうちで最も強いものは、他人に認められることを渇望する気持ちである」と言ったのは、哲学者・心理学者のウィリアム・ジェームスだそうです(『生きる力がわいてくる明言・座右の銘1500』、インパクト編)。

 一方、1980年第14回リハインターナショナルによる80年代憲章によると、リハビリテーションとは、「障害をもった個人を援助し、可能な限りその機能を発揮させるように、そして社会の中にインテグレート(統合)させるように、医学的・社会的・教育的・職業的な各手段を組み合わせて実行する過程である。リハビリは、障害を持った個人がなし得ないことよりも、残された能力によって何をなし得るかが重要であるという哲学に基づいている。各人が有する全ての能力を最大限に活用した生活へのアプローチである」とあります。

 日々利用者様と接している際、ついつい「何ができないか?」ということばかりに目が向きがちになってしまいます。しかし、それはその人を「認めない」ことになるのではないか?と反省してしまいます。

 「認める」とは「見留める」ということにもつながります。人が他人に認められることを渇望する存在であるならば、リハビリテーション施設である老健に勤める者として、「何ができないか?」ではなく「何ができるか?」を「見留める」、そして「認める」ことが、利用者様の「認められたい」という渇望に応えるとともに、全人的復権に寄与するのではないでしょうか。

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