キャリアアップ研修(基礎研修)開きました(県委託事業:その3)

 最後の講義は「生活リハビリ~在宅復帰に向けての支援方法~」。講師は介護老人保健施設サンヒルきよたけの支援相談員、春田 泰志さんにお願いしました。001IMG_0244

 生活リハビリテーションとは「『施設や自宅での生活で、利用者がしたいこと、できることを見つけ出し、生活動作として毎日繰り返すこと』で利用者の日常生活活動の自立と身体機能向上に結びつけていく方法」であることを踏まえ、訓練中にできていることを普段の生活でも同じようにでき、日常生活において提供するケアが利用者の自立につながり、在宅復帰が果たせるようにすることが重要とのこと。そのためにも「『できる力』を奪ってはいけない」として(1)その人のできる可能性を信じ、やりすぎた介助をしない、(2)業務に追われケアが作業化しないよう、ちょっと一呼吸入れる、(3)「してあげている」という気持ちにならないよう、主役を入れかえて考える・・・ことなどを学びました。002IMG_0200

 日常生活全般が生活リハビリであり、利用者が残された人生で自分がやりたいことを少しでも実現させるために、春田さんは「介護福祉士はその人にとっての自立に必要なアイテムを見つけ出すプロフェッショナル。利用者の生活状況、心理面、家族との関わりを配慮しながら利用者に沿ったケアを提供する」ことの重要性をスライドに提示。「利用者の活動・参加を促すとともに、その後ねぎらいと賞賛を毎日繰り返すことで生活の意欲と行為に結びつけていると意識して関わることが大切」と言い添えました。003IMG_0252

 さらに他職種が協働してアプローチする事も不可欠で、目標達成のために職種間の価値観を知り、役割の明確化、情報の共有化をはかることが利用者の自己実現を果たすことにつながるとのことでした。

 これらを踏まえ、在宅復帰に向けた生活リハビリテーションを展開するために「ゴールをイメージして接しましょう」として(a)自宅での暮らし(したいことなど)を共有し、施設での日常生活場面でその目標を共感、共有する、(b)利用者が願う暮らし方を捉え、介護スタッフが気持ちを支える・・・の2つのポイントを示した春田さん。実際にサンヒルきよたけで行っている生活リハビリテーションの取り組みを写真や動画を交えながら紹介すると、受講者は身を乗り出して見入っていました。004IMG_0264 005IMG_0261 006IMG_0263

 グループワークも取り入れ、受講者同士の情報交換や問題意識の共有も行いながら進められた講義は、老健施設の使命である在宅復帰機能の重要性を再確認するとともに、そのための基軸となる生活リハビリテーションの意義や内容、具体的な実践方法を学ぶことができ、大変有意義なものとなりました。007IMG_0256

(おわり)

キャリアアップ研修(基礎研修)開きました(県委託事業:その2)

 基礎研修の午後からはまず「基本的動作から学ぶ移乗動作~身体機能・動作のしくみを活用したトランスファー~」がありました。講師は介護老人保健施設慶穣塾の介護福祉士、椎葉 梓さんに努めていただきました。001IMG_0194

 講義ではまず基本的動作とは何か、という定義にはじまり、具体的に生活で必要な動作の内容、そしてそれらの動作ができるようになる過程を踏まえ、「発達の過程を知って利用することで正常動作(安定した動作)を身につけることができる」として「ボディメカニクス(※)」について学んでいきました。003IMG_0202 002IMG_0199

《(※)ボディメカニクス:運動機能である骨・関節・筋肉・神経等を使い、力学的原理を活用した介護技術のことで、介護する側にとって無理のない姿勢で介助すること》

 このボディメカニクスのしくみには(1)支持基底面・重心を活用する、(2)対象を小さくまとめる、(3)てこの原理を利用する、(4)対象にできるだけ近づく、(5)大きな筋肉を使う、(6)水平に移動する(重心移動の活用)、(7)身体をねじらない、(8)押す力よりも引く力を利用する・・・の8つのポイントがあるとのこと。それぞれについて詳しい説明がありました。そしてそれを踏まえ、正常な動作およびただしい介助とはどういうものか、事例を見ながら確認しました。一方、ボディメカニクスや正常な動作がわかっていないと危険な介助になると注意を促し、実演や実習を通じて正しい移乗介助の方法を学びました。005IMG_0237 004IMG_0221

 移乗介助で大切なこととして、(a)利用者を知る(身体・認知機能がどれほどのレベルか)、(b)目線を合わせ声掛けをしっかり行う、(c)目的をはっきり伝える(今から何をするのか)、(d)正常動作・ボディメカニクスを活用する、(e)利用者の残存機能を活用する、(f)後先のことを考え環境を整えておく(次に何を行うのか考え準備をしておく)・・・の6つがあることを念頭に置きつつ、スライディングシートなど福祉用具も活用しながら、様々なケースに応じた介助方法を具体的に学ぶことができ、実践的な講義となりました。006003IMG_0239

(つづく)

キャリアアップ研修(基礎研修)開きました(県委託事業:その1)

 当協会が県の地域医療介護総合確保基金にかかる介護人材確保推進事業として、宮崎県の委託を受けて昨年度から実施している「平成28年度キャリアアップ研修」。8日の「中堅者研修」、午後からの」「管理者研修」に続き9日は「基礎研修」午前・午後を通じて行われました。37人が受講しました。

001CIMG2219 午前中はまず「接遇・傾聴から見る働きやすい職場作り」と題し、介護老人保健施設おびの里の宮田 啓吾さんが講義を行いました。(1)介護現場での接遇・傾聴の必要性を理解する、(2)働きやすいとは何かを共有しあい共感できる仲間を作る、(3)働きやすい職場とは何かを考えるきっかけを作る・・・の3つを研修のねらいとし、学んでいきました。

 「人に近づく」を意味する「接」、そして「もてなす」を表す「遇」からなる「接遇」は「おもてなしの心を持って相手に接する」という意味。介護の現場において接遇は利用者や家族との距離を縮め、安心や信頼を得るための大切なツールであり、ひとりひとりの満足度に直接つながる重要なものとして、接遇のポイントである「挨拶」、「言葉づかい」、「聞く姿勢」、「お辞儀」、「身だしなみ」の5項目について説明がありました。002CIMG2223

 そして介護現場で重視される傾聴の目的やルール、ホスピタリティとおもてなしの関係などについて解説があり、まとめとして(1)利用者に対しても、職員に対しても思いやる心が大事、(2)職場においては言えない環境ではなく言える環境を作ることが大事、(3)働きやすい職場を作れるのはみなさんの力次第・・・の3項目を提示した上、で宮田さんがおびの里での接遇改善目標である「いつでも、どこでも誰にでも笑顔で挨拶。お名前も添えて」、「身だしなみチェックが、仕事のスタート」、「『です』『ます』の言葉づかいで、丁寧に」・・・を紹介すると、受講者は明日からの業務の中で実践しようと真剣に耳を傾けていました。

 続いての講義は「認知症を考える~その人に寄り添うケア~」。講師は介護老人保健施設みずほの山田 美邦さん。(1)認知症という病気について、(2)認知症の「人」について、(3)現在取り組まれている認知症ケア・・・という3つのテーマに沿って講義が進められました。

 003CIMG2229認知症の定義にはじまり中核症状と周辺症状の関係を説明する中で脳の障害で生じ、必ず見られる中核症状に対し、中核症状を基盤に心身のストレスが加わることで引き起こされる周辺症状は、周囲の支援で良くなったりひどくなったりするとのこと。不安や焦燥、混乱などを抱える認知症の人に対し、介護者が不安や不満、いらつき、負担などを感じながら不適切な対応をすると、周辺症状は悪化の一途をたどる悪循環に陥ることから、周辺症状に対する適切な対応が重要であることを学びました。

 そして介護者は(1)傾聴する、(2)共感する、(3)受容する、(4)触れる、(5)ペースをあわせる、(6)五感を使ったコミュニケーション・・・の5項目を気にかけ、満足、安心、やりがい、落ち着きなどをもって適切な対応をすることで、認知症の人は安心感、充足感、満足感などが得られストレスが解消。徐々に周辺症状が減っていき。それを目の当たりにすることで介護者のやりがいにもつながるとのことでした。

 続いてみずほで実践している認知症ケアの実際について、事例を交えながら紹介がありました。利用者個人に合わせたケアを6ヶ月間取り組む中で、不穏や昼夜逆転、幻視・幻聴がなくなり、意思疎通がはかれるようになるとともに、歩行能力の向上や箸を使用した常食の自力摂取も可能になるなどの目まぐるしい成果が現れ、本人や家族から大変喜ばれたことが紹介されると、受講者は高い関心を払って聞き入っていました。004CIMG2227

(つづく)

キャリアアップ研修(管理者)開きました(県委託事業:その2)

 管理者研修の後半は「介護施設における防犯対策」。講師は元宮崎県警本部特別機動警察隊長の山路 英敏先生です。001IMG_0160

 近年の施設や公共の場における残酷な事件を紹介しつつ、「管理者は社会情勢をよく見て欲しい」と呼びかるとともに、「暴漢への対策は訓練しかありません」と適切な防犯用品を備えるだけではなく、その正しい使用法や冷静で的確な対応を職員全員がとれるよう、定期の防犯訓練の必要性を強調しました。002IMG_0185 003IMG_0172 004IMG_0182 005IMG_0186

(↑防犯用品の紹介と実演も行われました)

 この事も含め、「施設管理者・責任者としての危機管理方策」としてまず「前兆事案」に対しては(1)社会情勢への関心、(2)早期の体制確立と教養の徹底、(3)最悪の事案への予測の3項目を、そして「訴訟を念頭に置いた証拠収集」については(a)現場対応は複数で、(b)証拠の収集と記録化、(c)組織的対応が原則・・・の3項目のポイントを具体的に学びました。

 この中で「(b)証拠の収集と記録化」については、「職員にはノート一冊をあてがい、電話や訪問があった場合にはボールペンで日付、氏名、内容等を書いて下さい。その際すき間無く、後から途中に書き入れたりできないように記録することが大事で、それにより裁判の際有効な証拠となります」とのことでした。

 また適用可能な犯罪の形態として威力業務妨害罪、脅迫罪、暴行罪、強要罪、恐喝罪、不退去罪などがあり、それぞれの内容について解説がありました。

006IMG_0190 最後に山路先生は「『警察安全相談』という言葉を覚えて帰って下さい。もし相談事があれば、近くの交番や駐在所で警察安全相談を活用して下さい」と施設の危機管理の一環として身近な相談窓口である「警察安全相談」を積極的に利用するよう呼びかけました。

(管理者研修レポートおわり:基礎研修レポートにつづく)

キャリアアップ研修(管理者)開きました(県委託事業:その1)

 当協会が県の地域医療介護総合確保基金にかかる介護人材確保推進事業として、宮崎県の委託を受けて昨年度から実施している「平成28年度キャリアアップ研修」。8日の午後からは「管理者研修」を開催しました。26人の受講がありました。001IMG_0121

 開会にあたり、当協会の櫛橋弘喜会長が挨拶に立ちました。002IMG_0125

 前半は「管理者が目指す講師は午前中の「中堅者研修」に続き、株式会社インターリスク総研の本田 茂樹 先生にお願いしました。003IMG_0142

 講義は利用者、家族、そして社会の「沸点」が低くなってくるなどといった、世の中の変化に伴い昔と今では経営環境が変わってきたことから始まり、安定経営の要素、経営とは何か、介護老人保健施設の経営状況、利用者満足、労務管理などについて説明がありました。004IMG_0148

 安定経営の要素として「経営者満足」、「利用者満足」、「職員満足」の3つがあり、そのバランスが重要とのことでした。そして見える指標の一つとして経営状況があり、平成25年度から同27年度における介護老人保健施設の経営状況を示し、その中で従来型施設の事業収益が減少し、赤字施設の割合が拡大している一方で、在宅強化型施設の事業収益は増加し、赤字施設の割合が縮小していることを指摘しながら、「在宅強化型施設に向けてかじを切ることを求められているのではないか、と考えるのは私だけではないはず」との見解を示しました。

 一方見えない指標として「利用者満足」を上げ、利用者満足が低下することが引き起こす悪循環に触れながら、「何事も入り口が肝心です」としてインテーク、アセスメントの重要性を強調しました。005IMG_0135

 サービス計画書に利用者本人または家族の納得、同意、承諾を得る際、すなわち入り口の段階で「ボタンの掛け違い」があると後に不満、苦情になること、そして「利用者満足度」は「実際に提供された商品・サービス」を「利用者の期待」で除したものであることを踏まえ、「老健なら転倒はないし、なんでもしてくれてずっと面倒みてくれる」などといった過度な期待を持たれないよう、入り口で十分時間をかけて利用者や家族の期待を適正なものにすることが満足度は違ってくると指摘しました。

 また3つ目のポイントである「職員満足」については「職員が満足していないのに利用者が満足するでしょうか。職員が不満を持っていたら適切なサービスはできません」と不適切なサービスにならないためにも職員満足を高める必要性を説きました。そして職員満足を考える上で必ずでてくる人事労務について、法律の考え方や定めておくべき職場の規律、人事評価および処遇のあり方などについて解説がありました。

 さらにキャリアアップやハラスメントについても言及した上で本田先生は「利用者に選ばれる施設、そして職員に選ばれる施設を目指しましょう」と呼びかけ講義を締めくくりました。006IMG_0138

(つづく)

キャリアアップ研修(中堅者)開きました(県委託事業:その2)

 中堅者研修の次のカリキュラムは「中堅社員のマネジメント力向上に向けて ~部下・後輩の指導育成力アップ」。株式会社インターリスク総研の本田 茂樹 先生に講義をお願いしました。001IMG_0072

 講義ではまず部下や後輩を指導する上で(1)「ちゃんとやってね」ではダメ、(2)説明を理解しているとは限らない、(3)大事なのは過去ではなく未来・・・という「3つの落とし穴」があるという3つのポイントについて説明がありました。この中で(1)については「『ちゃんと』の基準はありません。『ちゃんとやれ』と言われてもどうやっていいかわかりませんので具体的な指示が必要です」とのことでした。002IMG_0077

 次に指導育成力をアップする手法の一つとして「コーチング」について学びました。「コーチ(COACH)」とはそもそも「馬車」の意味で、「乗客を目的地に運ぶため」のもの。そこから転じて「コーチング」とは「対話を重ねることを通して、クライアント(コーチを受ける部下・後輩)が目標達成に必要なスキル、知識、考えを備え、行動することを支援し成果を出させるプロセス」だそうです。そして「コーチング」をする上で重要なポイントとして「人は無限の可能性を持っている」、「その人が必要とする答えは、その人が持っている」、「その答えに気づくためには支援が必要」があり、「指示する、アドバイスする、教える、多数を相手にできる、受け身になりやすい」を旨とする「ティーチング」に対し、「コーチング」は「相手から答えを引き出す、自発性を出す、動機づけができる、個別対応、時間がかかる」など、両者の違いを学びました。003IMG_0087

 またコーチングに必要なスキルである「傾聴」、「承認」、「質問」については、受講者同士によるロールプレイも交えながら実践的に学習していきました。この中で本多先生は「傾聴」の重要性について「聞く」という行為が「相手の声や言葉が聞こえてくる、音として入ってくる」のに対し、「『聴く』という字は『十四の心』と心と書きます。相手が何を言いたいのか、意識的に耳を傾けて『聴いて』下さい。利用者や部下、後輩と話すときは傾聴をして下さい。また先入観を持たず白紙の状態で相手の言うことを聴く『ゼロポジション』も大事です」と説明。受講者は傾聴を示す態度である「うなずき」、「あいづち」、「オウム返し」などによりその効果を実体験しながら真剣に取り組んでいました。004IMG_0091 005IMG_0105

(中堅者研修レポートおわり:管理者研修レポートに続く)

キャリアアップ研修(中堅者)開きました(県委託事業:その1)

2月8日と9日、当協会主催による「平成28年度キャリアアップ研修(中堅者研修・管理者・新人)研修」を宮崎市のJAアズム別館で開催しました。

 この研修会は地域医療介護総合確保基金にかかる介護人材確保推進事業として、宮崎県の委託を受けて当協会が昨年度より開催しているものです。002IMG_0037

 8日の午前中は「中堅者研修」には43人が受講しました。まず「中堅職員のためのメンタルヘルス」として「NPO法人人間関係アプローチきらきら」の錦井 祐子先生に講義をしていただきました。講義ではメンタルヘルスの4つのケア(セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケア)、ストレスの概念およびストレス反応の現れ方(心理面、身体面、行動面)、そしてラインによるケアの具体的内容やポイントなどについて説明がありました。001IMG_0054

 この中で「ラインによるケア」として管理監督者が行うケアには(1)職場環境などの問題点の把握と改善、(2)「いつもと違う」部下の把握と対応、(3)部下からの相談への対応、(4)メンタルヘルス不調の部下の職場復帰への支援・・・の4つがあるとのことを学びました。そしていつもと違う部下に気づいた場合の対応として錦井先生は「『気づいて、聞いて、つなぐ』ということを覚えておいてください。職業柄皆さんが話を聞いたら自分で解決しないといけない、と思うかもしれませんが、抱え込む必要はありません。状況を聞いたら専門家につないで下さい」と管理監督者は専門家との仲介役であることを強調しました。005IMG_0031

 またグループワークでは「リフレーミング」のやり方を学びました。「リフレーミング」はある枠組み(フレーム)でとらえられているものごとの「枠組みをはずして、違う枠組みで見る」こと。つまり同じものごとでも人によって見方や感じ方が異なり、ある角度で見たら長所にも短所にもなるという考え方で、たとえば「どうしても無理してしまいます」と自分の短所を語る人に対し、「頑張り屋ですね。責任感がありますね」とリフレーミングしてやることで気持ちが前向きになり、やる気を引き出せるということでした。これを受けそれぞれのグループではメンバーが自分の短所を上げ、それに対して他のメンバーが長所にリフレームして返して上げるワークを実践し、その効果を確認するとともに、適切なリフレーミングのための適切な言葉掛けを身につける必要性を体感していました。003IMG_0030004IMG_0051

 講義の終わりに「(リフレーミングのための)言葉の貯金をして、いろいろな言葉をかけてあげてください。皆さんの言葉の力は強いです。部下や後輩、そして自分自身にも言葉をかけてあげて元気に過ごしてください。そのためにもまずはセルフケア。自分がプラスでないと人の話を聞いてあげられません。自分をプラスにした上で話を聞いてあげて下さい」と呼びかけた錦井先生に、受講者からは感謝の拍手がおくられました。

(つづく)

高齢者に多い事件・事故学びました(支援&在宅部会合同研修会:その5)

001IMG_9828  (4)具体的事例と対応策の講義は交通事故に続き、「詐欺被害」、「施設事故」、「その他」について説明がありました。「詐欺被害」に関して講師の元警視 宮崎県警察本部 生活安全部参事官 兼 特別機動警察隊長の山路 英敏先生は、ご自身が警察署長を務めていた際に続発した不当な訪問販売の事例を紹介しました。犯人は一人暮らしの高齢者宅ばかりを狙い訪問。「屋根が傷んでいたので修理しました(実際にはどこも傷んでいないし修理もしていない)」と修理代をだまし取るという手口だったとのこと。結局その犯人は検挙されたのですが、「犯人を特定し、検挙できた突破口となったのは、しっかりした高齢者がおられて、領収書を書いてもらっていたからでした」と、社会常識として領収書をもらうよう高齢者に注意を喚起するよう参加者に呼びかけました。

 「施設管理」に関しては山路先生が鑑識課長をされていた時、コンセントにかぶったホコリが原因で火災になった事例を紹介し、施設管理にあたっては電気のたこ足配線やガス設備との距離などに注意すること、またそれらが原因となって起こる火災には避難誘導などの対策も含めて取り組みを徹底するよう強調しました。003IMG_9834

 最後に山路先生は「高齢者を事件・事故から守るための提言」として次の項目を示しながら「できるだけその人の顔を見て、声を聞いて下さい」と言い添えました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【高齢者を事件・事故から守るための提言】

◆《事件》

 (1)コミュニケーションの醸成(言葉を交わす)

 (2)事件化に向けた証拠の収集

 (3)関係機関との連携(警察、消費生活センターなど)

◆《事故》

 (a)シミュレーションの構築

 (b)情報の収集と共有化

 (c)こまめな記録化

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 そして山路先生は「この中の『(2)事件化に向けた証拠の収集』についてひとつ紹介したいと思います」と言いながらとった行動は参加者を驚かせました。002IMG_9871

 講演の冒頭「私は時間を守りたいと思いますので、念のために時計を置いておきます」と参加者に向けて置いた時計(?)を取り上げると「これは何だと思いますか?時計だと思いますか?」と問いかけたのです。唖然とする参加者に山路先生は「これは録画も録音もできます。こういうものでしっかり記録しておくことは、何かあったときに自分たちの身を守ることになります。言葉で説明するよりも画像がある方が強いです」と付言し、客観性のある正確な記録が自己を守る重要な手段となることを、道具を用いて示しました。

 講演の最後に山路先生は「法の無知は無罪にあらず」、「組織内での情報共有と共助が不可欠」、「『悩み』は初期的段階での解決が重要」とスライドに示し、「何よりも自覚を。皆様が色々なものを検討し、相談し情報を共有化し、そしてグッズも使いながら高齢者の事件や事故から身を守って下さい。併せて自分たちの身も守って下さい」と呼びかけて締めくくると、会場からは感謝の拍手がおくられました。004IMG_9858

 施設内はもとより、様々な生活場面で生じる高齢者が関わる事件や事故の実際を知るとともに、それらにどう対応していくかを具体例やグッズなどを用いて非常にわかりやすい説明があり、明日からの業務に役立つ大変有意義な研修会となりました。

(おわり)

高齢者に多い事件・事故学びました(支援&在宅部会合同研修会:その4)

 研修会も終盤にさしかかり、(4)具体的事例の紹介と対応策に移りました。事例は「(交通)事故」、「詐欺被害」、「施設事故」、「その他」の4つが上げられました。

 その中で交通事故については10万人当たりの事故発生率は20歳以上65歳未満が3.7人であるのに対し、65歳以上の高齢者では10.6人、約3倍に増えるとのことでした。山路英敏先生は「65歳以上になると事故の発生率が高くなるのではないかと思います。ですから皆様が高齢者のいる家庭を回られる時には運転免許証の有無や自動車に傷が入っていないかなどを確認していただくと、悲惨な事故が減るのではないかと思います」と参加者に呼びかけました。001IMG_9831

 さらに「横断中の事故が多い」と指摘。高齢者の事故の特徴として(1)高齢者は体力が衰えている一方で、昔の(身体能力の)感覚が優先される、(2)そのため左側から車が来ていても「これくらいなら渡れる」と判断して渡りはじめる(しかし身体がついていかない)、(3)そのため間に合わず車が来てぶつかる、(4)このようなことから渡り初めの事故ではなく渡り終える時の事故(=左から来た車にぶつかる)が多い・・・の4つを上げました。

 また夜間の自動車走行でライトを下げている場合、40メートルしか見えないことを踏まえ、高齢者には目立ちやすい服を着ることや反射テープを着けることを勧めるよう参加者に促しました。

 そして「大事なこと」として「死亡事故は非常に減ってきていますが、これはあくまでも『24時間以内に死んだ人』をカウントしているわけです。今は車の性能が良くなっていますし、医療技術も発達しています。そうすると24時間以上経って亡くなった方は死亡者としてカウントされていないわけです。24時間以上経過して亡くなった方も加えるとまだ多くなるのではないかと思います」と統計上の問題を指摘しました。さらに「高齢者の場合は交通事故による怪我そのものよりも、既に持っている病気などの関係でそれが重篤化することが予想されます。すると思ったよりも長期入院となってしまいます。やはり高齢者も自分の身は自分で守ることが大事であり、回りの方々も気をつけるように注意を促していただけると良いと思います」と説明すると、参加者は身を引き締めて聞いていました。002IMG_9838

 一方65歳以上の高齢者自らが運転して事故を起こす場合、「市街地よりも郊外の事故が多い(高齢者はあまり混雑した所は運転したくないため)」、「夜間よりも昼間の事故が多い(暗い時は恐いので明るいうちに動きたいと考えるため)」といった傾向があることなどを学びました。

(つづく)

高齢者に多い事件・事故学びました(支援&在宅部会合同研修会:その3)

 支援相談員研究部会と在宅支援研究部会による合同研修会「高齢者に多い事件・事故とその対応」。休憩を挟んだ後、防犯用品を使って事件から身を守る方法が紹介されました。講師で元警視 宮崎県警察本部 生活安全部参事官 兼 特別機動警察隊長の山路 英敏先生はまず5,6年ほど前に開発された新型の小型さすまた(「刺股」と書きます)を取り出して実演を行いました。001IMG_9856

 従来のさすまたは腹や胸を挟んで壁などに押さえ込むものですが、押し当てる壁がない広い場所では効果がなく、逆に危険な場合もありますが、このさすまたは内部のワイヤーが腕や手首、足首を締め付け、完全にロックされ抜くことができなくなるものだそうです。002IMG_9847003IMG_9851

 小型で軽く、取り扱いも簡単で女性でも屈強な男性を押さえつけることができるとのことです。004IMG_9862

 次に紹介されたのが銀行などにある防犯用カラーボールのスプレー版。約10メートルは届き、ついた色は容易には落ちないそうです。「付いた色は警察が捜査、検挙する際の重要な手がかりになります。『身長が170センチくらいで帽子とマスクとサングラスをしていた』ではわかりません。しかしこういう目印がついていると非常に蓋然性が高く、検挙につながります」とその効果を説明しました。

 このような防犯用品を施設に備えるだけではなく、実際にそれらを使わなければならないような場面に遭遇した場合を想定し「1年に1回でも良いですから講習を行って下さい」と、山路先生は訴えました。

 【information:防犯・護身用グッズの紹介、講習、販売について】

※今回の研修会での実演は、これらの用品を取り扱っている「ありがとう地球さんの商事」の協力を得て行われました。「ありがとう地球さんの商事」では施設からの要望に応じ、無料で防犯研修会を開き、グッズの使用方法講演や訓練、護身術の指導を行っていただけるそうです。

「ありがとう地球さんの商事」》代表:西本 正弘 様(宮崎県警察OBです)

http://www.miyazaki-catv.ne.jp/~m-24tikyu/top/index.html

〒880-0841宮崎市吉村町冬治甲850-23

TEL:0985-22-1811(ファックス兼用)

携帯:090-3070-2567

 (つづく)

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