協会活動報告

経営セミナー開きました(事務長会:その2)

 全老健の役員がまとめた「地域包括ケア研究報告書の要約」をスライドに示しますが、この中で大事なのは「介護保険施設は、リハビリテーションを充実し、在宅復帰・在宅療養支援、認知症対応、医療ニーズへの対応等の機能を重点化」するということ、そして「リハビリテーションスタッフが重点配備された施設を中間施設として位置づけ」するということです。これは特別養護老人ホームの皆さんにとっては厳しい文言かもしれませんが、かといって老健にとって優しい文言でもありません。「こうしないと介護保険施設ではないですよ」ということです。もう一つ重要なのは「介護保険施設類型の再編では、施設の類型より機能を評価」するということです。つまり”特別養護老人ホーム(特養)””老人保健施設(老健)””介護療養型医療施設(療養型)”という類型にお金をつけるのではなく、「やっていること」を評価するということです。こういう報告書に書かれたことは、必ず次の時点で生きてきます。

 運営基準を見ても、特養と老健と療養型は違いますし、設置根拠や医療に関する給付、そして人員基準も違いますが、同じようなことをしていたら「類型より機能を評価」というところではじかれると思います。したがって、一つの立ち位置を決めなければなりません。それぞれの違いが各施設運営の特徴として出ているか、そこを押さえておかないといけない問題だと思います。

 平成15年の改訂で、当時の老健の今後充実すべき機能は「在宅生活への復帰」と言われ、それにつながるリハビリが評価されました。特養は「自立した生活への支援」であり、ユニットケアも導入されました。

 平成18年の改定では全体改定率はマイナス0.5パーセントだったのですが、このときにも基本的な視点として中重度者への支援強化や介護予防・リハビリテーションの推進、医療と介護の機能分担・連携の明確化などが言われています。このときに「生活重視型の施設」または「在宅復帰・在宅生活支援重視型施設」のどちらかへ集約すると出ています。このときに思ったのは、「生活重視型の施設」というのは特養であり、「在宅復帰・在宅生活支援重視型施設」というのは老健だ、ということです。このときには療養型は廃止という方向が進んでいましたので、報酬上もこの2つに分けていくという考え方が資料から読めます。このときに老健には「試行的退所サービス費の創設」や、「リハビリテーションサービスの見直し・創設」などが出ています。

 このときに、介護療養型医療施設の廃止に伴う「転換型老人保健施設」が登場してきましたが、従来型の老健とは機能が違うので、「医療関係者や、住民の皆さんが誤解するので、できれば名称を変えて欲しい」と言った思い出がありますが、その時に「老人保健施設のあり方を再確認するチャンスだ」と思いました。

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(つづく)

経営セミナー開きました(事務長会:その1)

 (公社)宮崎県老人保健施設協会事務長会は921日(土)宮崎市のシーガイアコンベンションセンターで「経営セミナー2013」を開きました。日常生活圏域において医療や介護を包括的・継続的に提供できる「地域包括ケア」の重要性が指摘される中、地域の中で介護老人保健施設が果たすべき役割について学びました。

 今回のセミナーのテーマは「どうなるこれからの高齢者ケア ?地域包括ケアにおける施設の役割?(報酬改定からみた方向性)」。講師には(公社)全国老人保健施設協会(全老健)の前会長で現在は理事を務める(一社)熊本県老人保健施設協会の山田和彦会長を招きました。老健施設や特養関係者など、参加者は167名。これは関係者の予想を大きく上回るもので、当日は急きょ会場を変更しての開催となりました。開会にあたり、事務長会の川?豊彦委員長(グリーンケア学園木花)は、「昨今新聞やテレビ、そしてインターネットなどで医療・福祉の問題について色々な情報が出ていますが、いまひとつわからない状況です。そのため私たち施設側の人間、そして利用者もどう対処すればわからず、悩まれているのではないかと思います。この現状を踏まえ、本日は山田先生に膨大な資料をご準備いただき、遠方よりお越しくださいました。今後の報酬改定に向かってどう対処するか、そしてこれからも利用者が安心してサービスを受けながら人生を送れるにはどうすればいいか、考えるヒントにしていただきたいと思います。本日のセミナーがそれぞれの施設運営に役立つことを祈念します」と挨拶しました。

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(挨拶に立った川?委員長)

 

 

≪講演の骨子≫

 私は昨年の6月まで1年半の間、全老健の会長を努めました。今の動きについて十分理解していないところがありますが、みなさんの興味は今後の診療報酬改定、そして介護報酬改定がどうなるかということだと思います。今日はそれを読み解くために役に立つような話ができればいいと考えています。

 これから2025年がターゲット年度と言われていますが、地域包括ケアを抜きにしてはこれからの立ち位置はわからないと思います。この地域包括ケアとは、平成20年の社会保障国民会議が報告した「地域包括ケアの推進:医療介護の連携の重要性」の中で、「医療や介護のみならず、福祉サービスを含めた様々な生活支援サービスが日常生活の場(日常生活圏域)で用意されていることが必要であり、同時に、サービスがバラバラに提供されるのではなく、包括的・継続的に提供できるような地域での体制(地域包括ケア)づくりが必要である。
医療の機能分化を進めるとともに急性期医療を中心に人的・物的資源を投入し、できるだけ入院期間を減らして早期の家庭復帰・社会復帰を実現し、同時に在宅医療・在宅介護を大幅に充実させ、地域での包括的なケアシステムを構築することにより、利用者・患者の生活の質の向上を目指す」と述べています。それに対して現状は、「医療と介護が分断して提供されており、費用的にも人材的にも非効率」とし、「自宅で療養する患者を取りまく多職種が連携し、方針や目標やケア計画など情報を共有することにより、効率的で質の高いケアが包括的・継続的に提供可能になる」と、日常生活圏域において、医療や介護を包括的・継続的に提供できる「地域包括ケア」の重要性を指摘しています。

 この地域包括ケアシステムは、「介護」、「医療」、「予防」、「住まい」、「生活支援」からなる5つの輪が一体的に提供されないといけないということです。具体的には日常生活圏域を「30分でかけつけられる距離」とし、(1)まず高齢期になっても住み続けることのできるバリアフリーの高齢者住まいを整備して、(2)見守り、配食、買い物など、多様な生活支援サービスや権利擁護をすすめ、(3)住民ができる限り要介護状態にならないための予防の取り組みや自立支援型の介護を推進し、(4)&(5)もし必要になったらきちんとした介護サースや、必要な医療を提供しましょう・・・というので、これらが24時間、365日、包括的に切れ目無く行われることが必須ということです。

 

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(ご多忙の中、講演に駆けつけて下さった山田先生)

(つづく)

経口摂取・口腔ケア学びました(支援相談員部会:その7)

  そしてポイントです。「歯垢がどこにたまりやすいか?そこをどのように磨けばとれるか?」をわかって欲しいと思います。たまりやすい所は3カ所ですので覚えて下さい。まず「歯と歯の間」、次に「歯と歯ぐきの境目」、そして「歯の溝」です。そこを一本ずつ正しくしっかり磨いて下さい。道具も使い分けをして下さい。口腔ケアに使う道具には、歯肉や歯肉頬移行部、口腔底、頬粘膜、舌といった粘膜などのケアに使うものや、頬のマッサージに使うものなど色々あります。歯ブラシも誤嚥しないように吸引器のついたブラシや、入れ歯用のブラシなど色々あります。一本ブラシは、普通の歯ブラシだと必ず磨き残してしまう舌側の内側の奥歯の歯と歯ぐきの間を磨くのに適しています。

 磨き方ですが、パターンとしては誤嚥をした事がある人とそうじゃない人はやり方を変えて下さい。誤嚥をした事がある人は絶対に水を使わないで下さい。飲み込めないから誤嚥するわけです。肺炎をしないために口腔ケアをしているのに、水に溶けたばい菌が大量に肺に入ってしまい、肺炎を起こすために口腔ケアをしているということになってしまいます。当院では(1)口唇の保湿を行って口唇の動きをよくする、(2)保湿剤を歯列、歯肉に塗布する(以前に塗ったものを拭き取ってから改めて保湿していく)、(3)歯垢などの汚れを歯磨きしながら保湿剤に溶かし込む、(4)吸引しながら保湿剤ごと回収する・・・というやりかたをしています。

 本当は清潔なコップと不潔なコップの2つを準備するといいのですが、なかなか大変なので、食事用のコップではない手持ちのコップ1個と、ガーゼ(又はキッチンペーパーやティッシュなど、身近なもので可)を清潔用と不潔用の2枚準備します。口の中を洗って汚くなったブラシを不潔用のガーゼで拭いて、それをコップの綺麗な水で洗い、清潔用のガーゼで拭き取ってまた口の中に入れる、そしてまた不潔用で拭いてコップの水で洗う、とやっていくといいです。

 入れ歯ですが、歯磨き粉は研磨剤が入っていて入れ歯を傷つけますので絶対に使わないで下さい。入れ歯専用のブラシを使い、水道水を出したままで洗って下さい。また落として割らないように、下に水を張った洗面器などを置いて下さい。なお、入れ歯洗浄剤の使用は週1回でいいと言われています。

 歯磨きをした後も口腔内をしっかり観察して下さい。喉の方まで長い痰がついていることがありますので、スポンジブラシを回しながら使うと綺麗に取れます。また、片麻痺がある人は、麻痺側の口腔内に食べ物が残留しやすいのでしっかり確認して下さい。

 最後になりますが、嚥下機能云々の前に、「虫歯が痛い(う蝕)」、「噛むと痛い(歯髄炎)」、「入れ歯が合わない(義歯不適合)」、「口が開かない(炎症)」、「口が渇く、唾が細かい泡状だ(口腔乾燥症)」、「口の中に何かできている、痛い(口腔腫瘍)」などがあれば「もういらない」、つまり摂食障害になります。ですから原点に帰って「この人、歯医者さんに行ったらうまく食べられるようになるんじゃないか?」という見方もして下さい。

 また、「口腔ケアフローチャート」というのがあり、簡単で的確な口腔ケアメニューが決定できます。「口臭」、「痰」、「舌苔」、「歯垢・歯石」、「乾燥」の5つの項目で判断できるもので、これも和光堂のホームページhttp://www.wakodo.co.jp/kaigo/kankeisha/keikoijikasan/にありますので参考にして下さい。

 口腔ケアにより誤嚥を防ぐことはできませんが、口腔内細菌を減少させることで誤嚥時の危険性が提言できます。

 ケアができない患者さんの口腔ケアは施設やご家族の役割です。見つけてあげて、きちんとケアしてあげてください。そして、美味しく、楽しく食事して、楽しく口腔ケアできて、気持ちいいと思っていただきたいと思います。

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(終わり)

経口摂取・口腔ケア学びました(支援相談員部会:その6)

【4.口腔ケアについて】

 スライドに示すのは「バージニア・ヘンダーソンの看護の基本」です。彼女は100年前に生まれた看護師なのですが、「看護の基本となるもの」という著書の中で「患者の口腔内の状態は看護ケアの質を最もよく表すものの一つである」と述べています。つまり、「介護のレベルは、要介護者の口を見ればわかる」ということです。実際、介護先進国では口腔ケアは本当に大切にされています。100年前にすでに看護師がこのように言っていたわけですが、現在は獣医師も「お口は健康ですか?」と言うようになりました。

 6月に口腔ケア学会に行って話したのですが、口の中の歯周病の指数とリウマチの患者達のリウマチの活動性を調べたところ、関連していたのです。口の中をきれいにしたら、リウマチが良くなっていたのです。リウマチだけでなく、脳梗塞もそうですし、むし歯があると脳出血のリスクが4倍上がるということが2年前新聞にも大きく載りました。口の中の状態は全身の状態を示唆していますし、口の中の状態が全身状態に大きく影響します。実際に脳梗塞、脳出血で倒れて運ばれた急性期の患者は口の中が非常にきたないです。歯医者に行かれている人達とははるかにレベルが違う人達です。単に磨けていないだけではなく、全部ゆらゆらです。そういう状態まで放っておくのでもしかしたらそれも原因で脳出血を起こしたのかもしれません。

 糖尿病の方は口の中がきたなくなり、毛細血管がたくさんある歯ぐきが破れ、ばい菌が入ってきてすぐ感染しますが、逆です。糖尿が治らない人は実は口の中をきれいにしたら糖尿の値が良くなったということを糖尿病学会が出しています。糖尿だから口の中が汚くなるのではなく、口の中が汚いから糖尿が治らないということです。当院には糖尿病内科があるので、今年その調査に入る予定です。

 虫歯ができるための要因は「甘いもの」、「歯そのもの」、「口腔内細菌」、そして「時間」の4です。歯そのものがなければ当然ながら虫歯にはなりません。昔は「時間」は入っていなかったのですが、今は「時間」が加わりました。同じ甘いものが口の中に1秒あるのと100秒あるのと100時間のでは違います。ですから「甘いものを食べたら虫歯になる」というわけではなく、甘いものは食べてもらって構いません。要は最後に磨いてもらって落とせばいいわけです。甘いものが虫歯になるわけではなく、甘いものを虫歯菌がせっせと食べた後に糖を分解した酸を出します。歯は塩基性を帯びているのでこれが酸と反応して溶けて虫歯になるのです。だから食べ終わった後に歯磨きをしてもらえばいいわけです。実際に甘いものを食べなければ虫歯にはなりません。これは昔、スエーデンの孤児院で、甘いものを一切食べさせなかったら、虫歯が全くできなかったという本当の話があります。口腔内細菌は赤ちゃんには一切ありません。歯が生えてきても菌がなければ虫歯にさらされることはありません。「かわいいわね」とほっぺに口をつけたり、唾液が飛んで入ったりすることで感染します。するとあっという間に口の中で菌は増えます。虫歯や歯周病は感染症です。 したがって、「甘いもの」、「歯そのもの」、「口腔内細菌」、そして「時間」の全部が揃ったときが危険です。

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(つづく)

経口摂取・口腔ケア学びました(支援相談員部会:その5)

【3.経口移行加算、経口維持加算について】

 このように歯科医療者と他職種の連携によって口の中がきれいになったら、今度は経口移行加算・経口維持加算の話になります。これは管理栄養士と他職種との連携によるものです。経口移行加算は1日で28単位、そして経口維持加算の?も128単位ですから、口腔機能維持の管理体制加算や管理加算よりも高いです(経口維持加算?は5単位/日)。ただし、これは経口維持計画書や経口維持経過及び評価用紙など、多くの書類の整備が必要で、なかなか大変です。経口移行加算の指示は医師、経口維持加算の指示は医師または歯科医師となっていますが、宮崎でとっているところはあまりありません。大事なのは必ず管理栄養士が栄養管理を行っていることが算定要件だということです。これが大変ですが、管理栄養士の皆さんは計画書を緻密に書いて下さい。摂食機能評価依頼書、経口維持計画書、経口維持経過及び評価用紙などは和光同のホームページ(http://www.wakodo.co.jp/kaigo/kankeisha/keikoijikasan/)からダウンロードできます。

 経口維持加算?は、「経口により食事を摂取しているものであって、著しい摂食機能障害を有し、造影撮影又は内視鏡検査により誤嚥が認められる(喉頭侵入が認められる場合を含む)もの」が対象で、医師または歯科医師による造影撮影か内視鏡検査が必ず必要ですが、これができないので加算を取れてないのが現状です。経口維持加算?は「経口により食事を摂取しているものであって、摂食機能障害を有し、誤嚥が認められるもの」が対象となっており、水飲みテストや反復唾液嚥下テスト、食物テスト、咳テスト、舌機能評価、頸部触診などの、誰でもできる簡単なスクーリングテストだけなので、こっちの加算をとっているところが多いわけです。検査結果は私が作ったものがあるので、欲しい方は遠慮無く言って下さい。

 嚥下評価の流れは、まず問診をして、そのままの食事観察をして、必要があればスクリーニング検査をして、さらに必要があった時だけ造影撮影や内視鏡検査をします。

 介護保険に関する加算はこれらの他にも療養食加算、栄養マネージメント加算、口腔機能向上加算などがあります。とられていないところが多いと思いますので、調べていただいて、とっていなければとられるといいと思います。施設での取り組みへの報酬ですし、より多くの施設で算定することで、その必要性が認められ、加算が継続されていくということを理解して下さい。

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(つづく)

経口摂取・口腔ケア学びました(支援相談員部会:その4)

  この口腔ケアの効果についてですが、歯科衛生士が口腔ケアをやると、肺炎が起きる率がぐんと減ります。もちろん介護職員の人も一生懸命口腔ケアをやってくれていますが、歯科衛生士がやると半分くらいに減ります。それはどこを磨いたらいいかとか、どうすれば口を開いてくれるかなどのポイントを知っているからです。私たちも基本はしっていますが、歯科衛生士はテクニックがあり、手がよく動きます。

 福井智子先生らが3年間かけて行った調査研究によると、(1)介護職員による日常的口腔ケアに加えて、歯科衛生士による専門的な口腔ケア(週1?2回)を実施した群、(2)介護施設職員による日常的口腔ケアを実施した群、そして(3)従来群(なにもしなかった場合)・・・の累積肺炎の発症率は、(3)の従来群は3年間で累積肺炎発症率が30パーセント近くにもなるのに対し、(2)1年ちょっとまでは肺炎が発生せず、3年間で123パーセントにとどめることができました。そして(1)、つまり口腔機能維持管理加算をやると、2年越しても肺炎にかからなかった、という結果になりました。それで国が「歯科医や歯科衛生士と連携してやりなさい」と、昨年度から口腔機能維持管理加算を新設したわけです。

 それで歯科衛生士を雇う施設が増えてきました。歯科医の先生も頑張っておられます。もちろん雇ってもその分赤字です。でも雇うのはなぜか?患者が肺炎にかからないからです。1回かかると10万円かかり、抗生剤も使います。何人も肺炎を起こさなければ、黒字に変わっていきます。

 ただし、ネックになっているのは計画書を作って保管しなければならないことですが、今は和光堂のホームページ(http://www.wakodo.co.jp/kaigo/kankeisha/index.html)からダウンロードして活用できますので使って下さい。

 『(口腔機能維持)管理体制加算』と『(口腔機能維持)管理加算』の違いですが、『管理体制加算』は歯科医療者からの指導を受けることで、入所者への口腔ケアが効果的にできるものです。

 『管理加算』は入所者の口腔環境を整えるとともに、経口摂取をより安全に行うことができるものです。ただし、歯科衛生士が来て歯を磨くだけではありません。歯科衛生士は摂食・嚥下に関して高い専門性をもっています。食事も見られるし、嚥下も見られます。食事指導で食器の種類やセッティング、座り方の指導をしても1回にカウントされるというところがポイントです。それにより誤嚥も回避できます。

 キーワードは「多職種の連携」です。多くの職種の人がその専門性を活かして、お互いに情報を共有して一人の人にアプローチすることで、利用者に多くの効果をもたらすことになります。加算は多くはなくても、結果的には施設の職員も将来的には絶対に楽になります。大事なのはここだと思います。きちっとやっていくと口の中がついてきます。最初は時間がかかっても、短時間で済むようになって、それぞれの本来の業務に戻れるようになります。

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(つづく)

経口摂取・口腔ケア学びました(支援相談員部会:その3)

 口腔ケアで何が変わるかというと、今話したように誤嚥をして肺炎を起こすのであれば、口腔ケアをして細菌を減らして肺炎が防げます。それから忘れてはいけないのは味覚障害のこと。口の中がきたないと、味覚が絶対に変わります。正常な味が感じられなくなります。大したことないと思うかもしれませんが、今から三日間、誰ともしゃべらず、水も飲まず食べ物も食べず、じーっとしていたら、口の中にはあっという間に虫歯と歯周病が出てきてボロボロになります。そのまま口も洗わず歯磨きもせずに大好きなものを食べてみて下さい。「おいしい」と思って食べても、まったく別物の味になります。誤嚥リスクを回避するだけでなく、口腔ケアにより味覚を復活することで食欲が復活し、QOL(生活の質)の向上にもつながります。

 さらに、食べるだけではなく、社会性にも大きく関係しています。前歯に虫歯があって黒くなっている子がいますが、それを人に言われるのがいやで隠して、しゃべらなくなって社交性が途絶えるということは本当にある話です。人ときちんと話すためにも、口元をしっかりする必要があります。「芸能人は歯が命」ではなく、「みんな歯が命」なんです。

 

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【口腔機能維持管理体制加算・口腔機能維持管理加算】

 それで皆さんにやってもらいたいのは口腔機能維持管理体制加算と口腔機能維持管理加算への取り組みです。これは20124月の介護保険施設の入所者に対する口腔ケアの取り組みを充実する観点から、従来の「口腔機能維持管理加算(30単位/月)が「口腔機能維持管理体制加算(30単位/月)」に名称変更され、「口腔機能維持管理加算(110単位/月)」が新設されたもので、口の機能を維持しましょう、管理しましょう、というものです。口腔ケアをしようといっても、歯科医師と歯科衛生士がみんな駆り出されて老健施設などに行っても人手が足りません。そこでどうやったら利用者に対し、徹底的に口腔ケアができるか、というのを国が考えたわけです。歯科医療者が介護スタッフに説明や指導をして、そのスタッフが直接口腔ケアをしたり、あるいは他のスタッフに技術を伝達することで口腔ケアが浸透すれば、私たちが利用者の所に直接行かなくても、利用者の口の中がきれいになる、という考え方です。

 厚生労働省が定める口腔機能維持管理体制加算(30単位/月)の算定基準は、「1.介護保健施設において、歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、介護職員に対する口腔ケアに係る技術的助言及び指導を月1回以上行っている場合。2.歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士の技術的助言および指導に基づき、入所者または入院患者の口腔ケア・マネジメントに係る計画が作成されていること」。そして口腔機能維持管理加算の算定基準は「1.歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、入所者に対し、口腔ケアを月4回以上行った場合。2.口腔機能維持管理体制加算を算定している場合」です。

(つづく)

経口摂取・口腔ケア学びました(支援相談員部会:その2)

 「摂食・嚥下障害の悪循環」というスライドを示しますが、脳血管疾患の人たちと肺炎を起こすという関係というのはまさにこの悪循環と言えます。嚥下障害が起こる前にまず脳血管障害が起こって倒れて入院する。すると球麻痺や仮性球麻痺によって嚥下障害を起こす。そうなると栄養も水分も摂れないので脱水、低栄養になります。脱水によって血管の中に流れていた水が少なくなると、血管の中がべたべたして血栓ができやすくなります。つまり脱水が起これば脳血管疾患は再発します。すると多発性の脳梗塞になって重篤な摂食嚥下障害になります。これが悪循環なのです。

 更なる問題点は、胃の内容物が逆流することです。胃の中からもどしてきて、それが口から外に出てくれる力があればいいのですが、それができずにそのまま飲み込んで、それが気管に入り、更に肺に入る、これも誤嚥の一つです。運の悪い事に胃の中は非常に酸性度が高いので、肺に入っても酸性の状態になっています。それだけだったら抗生剤で治せばいいのですが、困るのはそれがのどで詰まってしまった場合です。食道を逆流したものが気管の中に入ってくれば肺炎で済みますが、気管をふさいでしまったら窒息です。抗生剤うんぬんの問題ではなく、死ぬんです。私は歯科医師で口腔外科に入った理由は摂食嚥下の患者さんが診られるからだったのですが、上の先生から「摂食嚥下リハビリテーションを甘く考えてもらったら困るのよ。死ぬの。人の命をとるの。安易に”食事がうんぬん”、”飲み込みが悪いですね”などで済む問題じゃないの」と言われたことがあります。人の命を簡単に取り上げてしまう分野ですから。

 誤嚥性肺炎になるには、「誤嚥」、「免疫力低下」そして「口腔内細菌」の3つが全部揃うことが条件となります。実は私たちも誤嚥しています。今も誤嚥しています。でもなんともないし、誤嚥したときにむせる力があります。また口腔内細菌があっても私たちが肺炎にならないのは免疫力が低下してないからです。さらに仮に免疫力が低下しても、誤嚥しても、口腔内細菌を持っていなければ、誤嚥性肺炎にはなりません。したがって、誤嚥をしないように指導するのも一つ、免疫力が下がらないように食事を考えたりすることも一つ、そしてもう一つは口の中を綺麗にすればいいのではないか、という話になって、ここが着目されるようになってきています。そうすれば誤嚥性肺炎は起きないわけです。

 余談ですが、今は「誤嚥性肺炎」と言わず「嚥下性肺炎」と言います。「嚥下」は「食べるあるいは飲むことができるものが、胃まで運ばれてくること」、一方「誤嚥」は「食べるあるいは飲むべきものが、誤って『肺』に入ってしまうこと」を言います。なお、「誤飲」とは「本来食べる、あるいは飲むべきものではないものが、誤って胃や肺に入ってしまうこと」ですから間違えないでください。代表的なのはボタン電池。子供が飲んで胃に入ってしまうことがありますが、これは「誤飲」です。高齢者が入れ歯を誤飲することもあります。

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(つづく)

経口摂取・口腔ケア学びました(支援相談員部会:その1)

  公益社団法人宮崎県老人保健施設協会支援相談員研究部会は921日、宮崎市の宮崎観光ホテルで全大会を開きました。会員老健施設等から98人が参加し、経口摂取と口腔ケアについて学びました。

 

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 講師は潤和リハビリテーション振興財団潤和会記念病院リハビリテーション歯科の歯科医師、清山美恵先生。清山先生は2005年に九州大学歯学部を卒業後、同学部顎口腔外科や宮崎歯科福祉センターを経た後、同病院に勤務し、現在に至っています。日本摂食・嚥下リハビリテーション学会の学会認定士であり、摂食・嚥下のスペシャリストとして活躍中です。この日も岡山での学会発表を控えた忙しい中をぬって講演に駆けつけて下さいました。口腔ケアは口だけの問題ではなく、身体全体に大きく関わるもので、特に我が国の死亡原因の第3位に上がった肺炎を予防する上で重要な役割を果たすことを学んだ、貴重な研修会となりました。

 その講演のあらましを連載していきます。

 

≪講演のあらまし≫ 

 

  今日は経口摂取と口腔ケアということで、依頼があった時、大した話はできないとお断りしようと思ったのですが、つたない知識の中で皆さんに話せたらいいと思います。こういう場を設けていただいてありがとうございます。

 経口摂取と口腔ケアというタイトルで話しますが、私の専門が摂食・嚥下リハビリテーションというところなんですけども、みなさん各施設などで点数のとりかたとか、どのように進めていったらいいかということを話してほしいということなので、そこに力を置いてはなしていきたいと思います。

 

【1.「経口摂取」とは? 「経口摂取」には?】

【嚥下のメカニズム】食物を認知して口腔に取り込み、咀嚼(そしゃく:かみくだくこと)により食塊(肉団子みたいなひとかたまり)を形成し、これを嚥下して胃に送り込む過程を嚥下といいます。気管の前を食道が通っていると思いがちですが、気管が前にあって後ろを食道が通っています。嚥下のメカニズムは
(1)先行期(認知期:見て、におって)、(2)準備期、(3)口腔期、(4)咽頭期、(5)食道期の5段階があります。

 食べ物を食べるとどうなるか、というと、食べ物は口からとったものが食道を通って、胃の中を通って小腸に行って、小腸から大腸に行って老廃物が排泄されます。この一連が食べる事・飲むことに大きく関わってきます。食べるというのは口の中でモグモグして飲み込むまでと思いがちですが、これら全部を捉えて経口摂取というところをわかっていただきたいと思います。

 死因別死亡率をスライドに示しますが、重要なポイントは肺炎と脳血管疾患です。脳卒中関係で亡くなる人は半数近くに下がってきました。これは昔の脳卒中の程度が重くて、今が軽いわけではありません。医療技術が進み、いい薬が出てきて下がっているのですが、助かる状態に違いがあって、かつては助からなかったけど、今はかろうじて助かる状態にあるという人がいます。非常に後遺症の強い方たちが半数近くに増えてしまっています。結果として脳卒中を起こしてついてくるのは誤嚥性肺炎。もれなくついてきます。案の定、脳血管疾患の死亡率は減りましたが、肺炎での死亡は急激に増えてきています。

 平成23年まで死亡率第3位だった脳血管疾患は平成24年に第4位になり、肺炎が第3位に上がりました。この事実を私たちは本当に深刻に受け止めなければなりません。特に老人保健施設などの介護保険施設は重大な問題になってきます。

 肺炎と脳卒中となんで関係があるのか?と思うかもしれませんが、肺炎と口腔内細菌は非常に関係があるということがわかったのです。誤嚥性肺炎の主な病原菌をスライドに示しますが、グラム陰性菌のPorhyromonass gingivalls(ポルフィロモナス・ジンジバリス)などの嫌気性桿菌は歯周病の代表的な菌で圧倒的に多いです。グラム陰性菌では口腔内嫌気性球菌が多く、歯ぐきの深いところに入って様々な悪さをする菌です。

 米山武義先生らの発表によると、要介護高齢者施設で2年間のうち7日以上発熱した者、肺炎で入院した者、肺炎による死亡者は、口腔ケアをした人たちが、しなかった人たちと比べて統計学的に有意に低いことが示されている通り、口腔ケアをした人としない人とでは大きな違いがあります。口腔ケア、つまり歯磨きをするだけで肺炎は半数に減るのです。やるだけでいいという話です。それにより死亡者は劇的に減るわけです。また発熱は肺炎だけではないのですが、これも半数近くに減ります。

 また、頭頸部癌患者の口腔ケアを術前、術後に行った者では、行わなかった者に対し、瘻孔形成、創部感染、肺炎などの二次感染の発症率が4分の1くらいに確実に減っていきます。このデータがあれば「なるほど口腔ケアしないといけないな」となります。

 ただし、皆さんの中に朝ごはん食べて歯を磨いていない人がいると思いますが、それでも肺炎にはならないですね。そこのところも大事ですので頭に入れておいて下さい。

 また、同じく米山先生が調べた要介護高齢者における2年間の肺炎発症率は、口腔ケアをした方が、しなかった方より低いことが示されています。これは口腔ケアをすると菌の数が減りますが、誤嚥した場合、その食べ物のかたまりの中に菌が1万いるのと、100いるのとでは全然違うわけで、数が少なければいい、という事が言えるわけです。また、歯磨きをするとナチュラルキラー細胞の動きが活発になり、免疫力が上がり、肺炎になりにくくなります。

(つづく)

「老健みやざき」間もなく発行!!

 (公社)宮崎県老人保健施設協会の広報誌「老健みやざき 28号」が間もなく出来上がります!

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 今回の「老健みやざき」、巻頭を飾るのは「老健ルポルター寿(じゅ)」。隔号で掲載を予定しているこの企画、第4回の訪問先としてルポ隊が訪問したのは西臼杵郡唯一の老健、高千穂町の“神楽苑”。建物にびっくり!人にびっくり!取り組みにびっくり!!宮崎県最北端の神話伝説の町で、驚きっぱなしのルポ隊が見た事、聞いたこと、感じたことを掲載しています。

 これに続き、感染制御や褥瘡予防について学んだ看護介護研究部会研修会、利用者本位の”ポジティブプラン”を作る事の大切さを学んだケアプラン研究部会研修会、認知症高齢者の食事摂取に関して、「食と味の認知」という観点から学んだ栄養・給食研究部会研修会など、各部会の活動報告を掲載しました。

 さらに「リレーコーナー」では、県内各地の老健施設の、色々な職種のスタッフにお声を寄せていただきました。

 最終頁を美味しく飾るのは、「人気のおすすめメニュー」サンビュー宮崎の管理栄養士、永友里沙さんに利用者様に大好評の逸品の数々を紹介していただきました。

 「老健みやざき 28号」は、9月下旬から10月上旬に会員施設や関係機関に送付するほか、この当協会ホームページ上でも閲覧、ダウンロードできるようにする予定です。どうぞお楽しみに。

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