協会活動報告

研修会開きました(栄養給食部会、おまけ)

 718日に宮崎市の介護老人保健施設ひむか苑開かれた(公社)宮崎県老人保健施設協会栄養・給食研究部会の研修会。「認知症高齢者の食と味の認知を考える」と題し、講演をされた同苑の医師、田代学先生は、同時に県内でも著名な郷土史家でもあります。そして宮崎の文化や歴史などに関する著書も多く出されていますので、そのほんの一部を紹介いたします。

【消えた赤江川 大淀川界隈新風土記】・・・平成7630日発行、印刷:身体障害者通所授産施設やじろべえ

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「大淀川は古くは赤江川とよばれていたのである」。つまり赤江(灘)に注ぐ大河が赤江川と呼ばれるようになったのはごく自然なことだった。ただし、この赤江川が大淀川に改称されたのではなく、「中央、つまり日本国から見たとき、日向国を二分する川は藩政時代には既に小戸川の転訛した大淀川が通称となっていた」、これが正しいのだそうです。変わったのではなく、消えていったということを田代先生は強調されています。

これを口火にし、大淀川に関する色々な事を徹底して調べ上げ、著され一冊です。中でも「ヅンブリ島の十万両」は衝撃的です。大淀川河口近くのヅンブリ島に、なんと十万両が埋められているというのです。1676年(元禄5)、幕府の領地となり、吉村庄屋清水清左右衛門が預かり仰せつかり、その子清蔵が請地を願い出て官の軍用金十万両を島の中ほどに埋めたらしいのです。「水をかぶる」の意の「ヅンブリ」島は、那珂郡田吉村にありましたが、今は陸続きで、丸島付近の大淀川と八重川に挟まれるあたりだそうですが、この十万両の埋蔵金話、果たして真実なのでしょうか。そのほか、寛文2年(1662年)に起きた日向国大地震や、宮崎平野の地名(大字、字、小字)の由来、さらに宮崎市と綾町に電気鉄道を通そうという計画があった話など、興味津々の内容です。

 

【甦れ宮崎城 完結編】・・・1999101日初版発行、江南書房

 

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 ほとんどの県庁所在地には城があったのに、宮崎市にはなかったのか?いいえ、「宮崎城」は実在したのです。宮崎市池内町の介護老人保健施設春草苑前を南に進むと、道の右側に「宮崎城址」の看板が見えます。そこに宮崎城はあったのです。県領主、高橋元種(あがたりょうしゅ、たかはしもとたね、元豊前国香春岳城主)、宮崎城主権藤種盛(ごんどうたねもり)、豊前国中津城主黒田如水、飫肥領主伊東祐兵(いとうすけたけ)、清武城主稲津掃部助(いなつかもんのすけ)などなど、宮崎城にまつわる歴史上の人物が登場し、当時の様子を生き生きと再現します。ただし、宮崎城の戦いは、あろうことか同士討ちだったことが後に判明するなど、読んでいて切なくなるような事実も紹介されています。

 裏表紙には田代先生自ら描かれた「宮崎城合戦之図」が載っており、先生の多才ぶりにも驚かされます。決して大河ドラマのテーマになることはないであろう宮崎城ストーリー。しかし、タイトルの「甦れ宮崎城」からも察せられる通り、なんとか史実を調べ上げ、後生に宮崎城を伝え残そうという、田代先生の熱い思いがひしひしと感じられる名著です。

 

【大淀川ミニ風土記 橋が語る宮崎】・・・2006(平成18325日発行、発行者:財団法人宮崎県建設技術推進機構、宮崎南印刷制作印刷

 

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 宮崎市の天満橋が開通したのを記念して、田代先生が著された”橋物語”です。宮崎市内の大淀川に架かっている(そして架かっていた)12の橋について、その歴史や構造的特徴、さらには周辺情報などが32話にわたって記されています。わずか71ページの中に貴重な写真や、ためになる「ミニコラム」など、盛りだくさんの内容。カバンに入れて「宮崎の橋探検」の旅に出たくなるような作品です。

 

・・・以上の作品は、現在書店では取り扱っていない事も考えられますが、図書館などにはあるかもしれません。田代先生、ためになる講演、そして書籍、ありがとうございます。そして今後さらなるご活躍を祈念申し上げます。

全体会開きます(支援相談部会)

 (公社)宮崎県老人保健施設協会支援相談員研究部会は920日、宮崎市の宮崎観光ホテルで全体会を開きます。

 講師に一般財団法人潤和リハビリテーション振興財団潤和会記念病院の歯科医師、清山美恵先生を講師に招き、経口摂取と口腔ケアについて学んでいきます。

 なお、この全体会は支援相談員以外の職種の方や、老健以外の事業所の方や一般のお方も受講できます。参加費として老健職員の方は、お一人500円が必要ですが、それ以外の方々は無料です。

 くわしくはこちらをご覧ください。またこの全体会へのお申込みおよびお問い合わせは介護老人保健施設しあわせの里(担当:支援相談員、笠原章寛、電話:0987-55-4800FAX0987-55-4507)までお願いいたします。

研修会開きました(栄養給食部会、その6)

 講演に続き、研修会参加者によるグループワークが行われました。栄養・給食部会が県内各ブロック持ち回りで開催している高齢者栄養教室の今後の進め方などについて話し合い、熱心な意見が交わされました。

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 認知症高齢者の食事について、”食と味の認知”という今までにない観点から学ぶことができた、非常に有意義な研修会となりました。

(おわり)

研修会開きました(栄養給食部会、その5)

【嗅覚・味覚障害と食の記憶障害】

 嗅覚・味覚障害がなく、食の記憶障害もない場合、食べ物を見て、その見た目や臭いと記憶が一致すれば、つまり「思う味が一致」すれば「美味しい」と感じます。

 しかし、嗅覚・味覚障害があって、食の記憶障害がない場合は、「思う味」と違う味となります。つまり、「期待したものじゃなかったので、もう食べない」となったり、食べたけれど「何か変だな?」となるなどして、食の誤認や食への拒否が生じかねません。

 また、嗅覚・味覚障害はないが、食の記憶障害がある場合は、現在の味と対比することができません。味覚に対して不思議な感覚をもつが、学習できないなど、どういう風に食べ物をとらえているかわからなくなっています。

 

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【認知症高齢者の味の再生障害】

 認知症高齢者の食と味の認知を考える上で重要なのは、認知症高齢者の味の再生障害がおきているということです。認知症の人の多くは、私たちが思っている味ではない味を頭の中で、口のなかで再生していると考えた方がいいわけです。

 この認知症高齢者の味の再生障害には、高齢者ゆえの問題として視力障害による情報の減少、嗅覚・味覚の変化による嗜好の変化、食事摂取量減少による亜鉛量の減少、薬剤に起因する亜鉛の排泄促進・吸収障害および唾液量減少などが、また認知症者ゆえの問題として嗅覚・味覚障害や味の記憶障害などが関わっています。

 見て、嗅いで、記憶の情報ができます。そこで味覚の記憶と食べ物の記憶とあわせて、一致したら「このようにして食べよう」という摂食行動が起こります。そして食べてみて口腔内の化学・物質刺激があって、どういうかみ方をすればいいか、という咀嚼行動に出ます。そしてそれは「こんな味だった」という味覚情報として大脳の方に戻されます。それが記憶と一致したときに「美味しい」と感じます。

 もしこの経路のどこかが侵されていたら、情報が行き来しなくなって「美味しい」という合致した答えが出ないのかもしれません。

 

【いずれは私たちもいく道】

 皆さんの施設でも色々な工夫をしていることでしょうが、利用者が果たしてどこまで認知されているか?味をどこまで理解されているか?を考えないといけないと思います。

 認知症高齢者が食と味を認知できないことを考えていたでしょうか。食事の記録をするときはどうしても「食事は何割摂取、嚥下障害、ムセなし」などとなっていたのではないでしょうか。食事の際、「喜びの表情があった、会話があった、”おいしかった”があったかどうか?」などを記録にしないというか考えてないような気がします。

 認知症の方がどんな味で食べられているかをもう一度考えていいのではないでしょうか?私たちもやがて行く道です。その時に少しでもいい物が食べられると思えば、今どうにかすればいいのではないでしょうか。このことは私の反省でもあります。

 Maslowの「人間の欲求5段説」にもある通り、食べることは人間のもっとも原始的な生理*的欲求です。認知症の人はそれによって食べられているかもしれませんが、その人にとって少しでも美味しい物を考えていってあげることも大事ではないでしょうか。私も研究していきたいと思います。皆さんも「”これがおいしいからおいしいですよ”、ではない」ということを頭にいれられた方がいいのではないかと思います。

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(講演終わり)(つづく)

研修会開きました(栄養給食部会、その4)

【味覚障害を起こす疾患〔2〕】

 味覚障害を起こす疾患には他に次のようなものがあります。

 

1)全身疾患:栄養欠乏(鉄欠乏性貧血、ビタミンAB2B12欠乏症など)、糖尿病、高血圧症、胃潰瘍、肝炎、肝硬変、腎炎、感冒、インフルエンザ、脳梗塞・脳出血に伴う中枢神経障害)

2)口腔疾患:舌炎、軟口蓋炎、舌癌、口腔内の火傷、過度な舌清掃、多量の舌苔付着、ジェーグレン症候群、唾液分泌の減少

3)突発性疾患:血清亜鉛値を含め、種々の臨床検査が正常であり、味覚障害の原因が特定できないもの。

4)心因性障害:下面性うつ病や不安神経症などの心因性ストレスが原因となることがある

5)風味障害:味覚は正常でも、嗅覚障害があると、味覚異常を訴えることがある

 

【薬剤と味覚障害】

 服薬している高齢者は、服薬なしの高齢者よりも味覚障害である率が高いとの報告があります。また、5種類以上の薬を服薬している服薬している人の4人に一人が薬剤性味覚障害との報告もあります。

 薬剤による味覚障害は、薬剤による亜鉛に対するキレート能(薬剤が亜鉛を取り込んでしまうこと)があり、尿中への排泄を促進するためと、亜鉛吸収障害によるとされています。

 

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【味覚障害を起こしやすい薬剤】

 味覚障害を起こしやすい薬剤には、亜鉛に関連するものだと心身安定薬、睡眠導入薬、抗うつ薬、降圧薬、利尿薬、抗高脂血症、抗胃炎・抗十二指腸潰瘍薬、解熱鎮痛薬、骨粗しょう症治療薬など、ごく普通の薬にあります。

 次に、唾液の分泌を低下させるものとしては、抗精神病薬、抗うつ薬・抗不安薬、制吐薬、消化性潰瘍薬、抗パーキンソン病薬、抗コリン薬、ステロイド、筋弛緩薬、抗がん薬、抗てんかん薬、抗ヒ薬、解熱鎮痛薬、利尿薬、交感神経抑制薬、抗不整脈薬、抗ヒ薬、局所麻酔薬などにあります。唾液の分泌が減るということは、食べ物がひっかっかって飲み込めないし、味覚も変わります。

 

【唾液と味覚障害】

 唾液に溶けた物質は、分子やイオンの形となり、味蕾(みらい)の中にある味細胞に味物質が作用し、基本4味のそれぞれの受容体が刺激されると味覚神経が脳へと指令を送ります。この味物質は、唾液などで水溶液に溶解しなければ味覚は生じないため、唾液の分泌量は味覚の感受性に影響を与えるわけです。唾液の分泌量は、一般に加齢とともに減少するといわれますが、個人差があります。

 

【全身疾患と味覚障害】

 味覚障害を来す全身疾患には、次のようなものがあり、亜鉛の吸収を阻害し、排泄を促進する働きの両者、もしくはいずれかを持っています。

1)栄養欠乏(鉄欠乏性貧血、ビタミンAB2B12欠乏症など)

2)糖尿病、高血圧症、胃潰瘍など

3)肝炎、肝硬変、腎炎など

4)感冒、インフルエンザなど

 また、中枢神経障害として脳梗塞や脳出血後遺症などでは、舌で感じた刺激が頭の中に伝えられる途中が障害されて味覚障害を起こします。

 

【認知症高齢者における嗅覚障害】

 パーキンソン病では、まず延髄、嗅球、前嗅覚からレビー小体の形成が認められ、パーキンソン病の初期症状としての嗅覚障害に留意が必要です。また、レビー小体型認知症でもレビー小体の関与による嗅覚障害が生じます。アルツハイマー病では、早期に嗅覚低下を呈します。アルツハイマー病やパーキンソン病の多くは、その罹病初期から加齢以外の原因による嗅覚障害が高い確率でみられ、その低下に自覚がないのが特徴とされています。

 

【脳にはどのような病変が生じるか】

 アルツハイマー病では、海馬と嗅内野が脳内で最初に侵される部位です。臭いは鼻のすぐ上に嗅球があって、これから情報が伝わって嗅覚野に行きます。アルツハイマー病で最初にやられる場所と、臭いをかぐ場所がほとんど一致しています。老人斑ができているということは、においをかぐ力も落ちているということです。認知症が出る前に嗅覚障害が出ているのではないかとも言われています。

 片側の嗅覚野の障害では臭いはわかりますが、両方やられると嗅覚障害、そして味覚障害にまでなってしまいます。アルツハイマー病では両側やられるので味覚障害・嗅覚障害が出ていてもおかしくないと言えます。

 レビ?小体病にはパーキンソン病とレビ?小体型認知症の2つがあります。パーキンソン病の人が認知症になりやすいのは、レビー小体型認知症になるのではないかと最近では言われています。レビー小体病(パーキンソン病・レビー小体型認知症)、多発性脳梗塞の人は、とくに味覚を伝える神経の障害のために、発症早期から味覚障害を来す可能性は十分に考えられます。

(つづく)

研修会開きました(栄養給食部会、その3)

【風味:実際に味わう感覚】

 実はあまり「風味」という言葉が好きではありませんが、他に言葉がありません。日常の味覚の体験は、視覚・嗅覚・温覚・圧覚・触覚などの感覚と記憶などで拡張された知覚で、心理学的な感覚としての味は「風味(ふうみ、flavour)」と、呼ばれることが多いです。

 基本味以外の「辛味物質」「アルコール」「炭酸飲料」などの化学的刺激や、「熱さ」「冷たさ」などの温度、そして「舌触り(つぶつぶ感、柔らかさ、硬さ、滑らかさ)」などの物理的刺激は、味蕾を介することなく刺激として大脳に送られ、5種類の基本味と合わされて総合的な味覚を形成していると考えられています。

 具体的に言うと、味覚(基本味)はそれ単独では存在しえず、大なり小なり、嗅覚あるいは視覚や記憶などに影響を受けます。例えば、レモンの酸味とライムの酸味の成分は同一であり、基本味的には違いがないのですが、風味は視覚、嗅覚あるいは記憶によって両者の違いが強調されて認識されます。

 つまり、「甘い」料理を作ったからといって、認知症の人が「甘い」と感じているかどうかは別問題かもしれなません。                                                                                                                 

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【高齢者の視覚問題】

 100歳以上は100パーセント、80歳以上でも50パーセント以上の方は視覚障害があります。治療可能な障害は約半分(50.8パーセント)。つまり、若い人通りの視覚を持っている人は少ないと言えます。高齢者の眼疾患には老人性白内障、糖尿病性網膜症、緑内障、加齢黄斑変性症、網膜剥離、眼底出血などたくさんあり、どれも視覚障害を来しますが、問題なのは「見えない」ことではなく、「情報の減少」です。”建物がしっかり見える”という情報、”新聞が読める”という情報、”段差が見える”といった情報です。情報が減少すると、例えば段差が見えずに転倒や骨折を起こし、それが引きがねとなって社会的孤立や、うつ、認知症を引き起こすという問題があります。

 もちろん、食べ物が見えるという情報の減少にもつながります。たとえば白内障の人が食べ物を見るとなると白っぽくなります。ということは、食べるときに目で確かめる、目で喜ぶということが阻害されているということを考えるべきです。

 

【高齢者の嗅覚機能低下】

 つぎに臭いについてです。一般的に加齢により嗅覚機能は低下すると言われています。パーキンソン病では、まず延髄、嗅球などからレビ?小体の形成が認められ、パーキンソン病の初期症状としての嗅覚障害に留意が必要です。また、アルツハイマー病やレビー体病でも、レビー体の関与による嗅覚異常が生じます。

 

【高齢者における味覚障害の特徴】

 生理的な加齢現象により、味覚機能は衰え、甘味・塩味・酸味・苦味の基本4味に対する味覚閾値は、個人差はあるものの年齢とともに増大すると言われています。つまり、かなり甘い、かなりしょっぱい味にしないと、味として認識されないと言われています。そうすると若い人と比べ味が薄いと感じ、また基本4味が混ざり合った複雑で微妙な味覚がわからなくなります。

 しかし、その程度には個人差が認められ、(1)全身疾患、治療のための薬剤投与、(2)食生活による亜鉛摂取量の低下、(3)唾液分泌量の低下・・・が複雑に影響していると考えられています。年取ったから味覚障害、ではなく、その前にこのようなことを考えましょう。

 

【味覚障害の種類】

 味覚障害は「ただ味覚が鈍くなった」だけではなく。次のように色々なものがあります。

(1)味覚減退:味を薄く感じる

(2)味覚脱失・無味症:味が全くわからない

(3)自発性異常味覚:実際は何もないのに、口の中で特定の味がする

(4)異味症・錯味症:飲食物が本来の味とは違う味に感じる

(5)解離性味覚障害:特定の味質だけがわかりにくい

(6)部分的味覚障害:舌や口腔内の特定の部位が味を感じない                      

 

【味覚障害を起こす疾患〔1〕:低亜鉛血症が最多】

 疾患とまではいわないまでも、若年者を含めると、味覚障害をきたしやすい病態は、低亜鉛血症であり、全体の50パーセント近くで、その中でも、薬剤による低亜鉛血症が多いとされています。その他、亜鉛摂取不足、病気による亜鉛摂取障害、亜鉛排出過多などが含まれます。

 亜鉛(Zn)は骨やすべての細胞内に分布していて、DNAや蛋白質の合成、糖質の代謝などの生理作用があり、特に新陳代謝が活発な味蕾(みらい)の形成に必要で、不足すると味覚異常をきたしやすくなります。高齢者は食事の量が少ないということで、まず亜鉛の量が少なくなっているのではないかということが指摘されています。

 亜鉛は魚介、肉、海藻、野菜、豆類などに含まれ、特にカキはよい供給源です。

(つづく)

研修会開きました(栄養給食部会、その2)

【食の認知について】 

 職の認知(分類)は次の通りです。

1)認知期(先行期):食物が口腔に入る前の時期で、何をどのくらい、どのように食べるか決定し、行動する段階。

2)咀嚼期(準備期):食物を捕食し、続いて咀嚼してから嚥下運動が行われるまでの段階

3)咽頭期:反射運動により、食塊を咽頭から食道へ移送する段階

 

 この中で、「認知期」では、目で見て食べ物の固さや味や温度、臭いを情報としていれて「ああ、これは○○○○と言う食べものだ。どのようにして食べればいいか、一回量は?早さは?思い切り噛まないといけないか?口を大きく開けないといけないかなどと考えるわけです。そして無意識に唾液が出てきますが、これは口に入れる前に出るのです。これは大事なことなので覚えておいてください。

 認知の前提として、見えるのか、においがかげるのか、記憶にある食べ物と対比してこれは固いぞ、甘いぞ、ということがわかっているのか?を考えないといけません。認知ができないと、食べ方が全く異なってくるのです。例えばフランクフルトソーセージなどは、中に箸が入ってるから、一気に噛んではいけません。やさしく食べて引き抜いて、という食べ方はこの段階でやるのですが、それができないと大変です。認知できないと、柔らかい食事を強く噛んで歯を折ったり、舌を噛んだりする可能性はないか?と思います。

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【味の認知】

 味の認知は一言で言うと味覚ですが、味覚は生理学的には「甘味」「酸味」「塩味」「苦味」が基本四味とされ、「旨味」を加えて5種類が基本味となっているという本もあります。最近6番目の味がアメリカで発見されて認定されるかもしれないとのことです、今日は4味だけで話をすすめます。

 

【舌などの味覚感受性】

 ベロには色んな感覚を感じる場所があり、それを神経が頭に伝えます。また軟口蓋・喉頭蓋・食道上部内面にも味覚受容体は存在します。これがどういう味を感知するかはまだわかっていません。ビールののどごしはここにあると思います。それぞれの味は別々の神経で脳の中の方に伝達されます。食べ物全体が口の中に入ると、役割分担して情報が頭にいきます。甘酸っぱいものは2つの場所、2つの神経から頭にいって合成されて「これは甘酸っぱい」という一つの味として伝えられます。

【唾液の役割】

 食べる前に唾液が出ると言いましたが、固形物が味として感じるには溶けないと味細胞に感知されません。溶けるということは唾液が出ているということです。角砂糖を甘く感じるのは溶けた部分が味細胞に伝わって甘味として伝わっているということです。唾液が少ないということは飲み込みにくいということもありますが、味も感じにくいということでもあるわけです。

 

【第1次味覚野、第2次味覚野】

 味覚情報は延髄を介して頭に上っていきます。そして視床を通って前頭葉の第1味覚野にいきます。ここで味の質や強さを判断しまする。これは側頭葉のすぐ上の前頭葉の下の方です。

  2次味覚野は咀嚼や味覚などの情報が統合され、食物の認知や好き嫌いなどが判断されます。そのすぐ横に扁桃体がありますが、それと海馬が記憶情報になっているので、頭の中にある食べ物の情報、例えば「あれは肉まんだった」という情報と目で見た情報、そして肉まんの臭いがして「あ、これは熱いぞ、やわらかいぞ、だからこうやって食べよう」という命令が生まれるのです。

 この海馬がアルツハイマー病では最初に萎縮します。その前に扁桃体(記憶の脳みそ)があります。花王健康科学研究会によれば「食行動を決定するのは、その食事の味や環境、雰囲気などを記憶している扁桃体が重要な部分を担っており、(海馬や)大脳辺縁系や大脳連合野とも連携して、過去の記憶や情報と照合して摂取して良いかを判断する。このような統合過程を『認知』といい、視床下部は扁桃体や大脳からの情報を受けて、食欲、飲水、性行動、体温、情報、内分泌といった働きを調節する。このような脳での情報伝達の連携プレーにより、食行動の認知が行われ、食物に対する『おいしさ』が自覚される」とのことです。「あれが食べ物だ。食べよう。甘いぞ、・・・」というのは難しく複雑な過程を経てすぐ答えている。

 これが全部認識されていないといけないのですが、認知症の人は認知できているのでしょうか?食の認知、味の認知が合致して「美味しい」となるのは、認知できることが前提です。認知症の人が私たちと同じように判断できているのかはまだはっきりわかっていません。

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(つづく)

研修会開きました(栄養給食部会、その1)

 (公社)宮崎県老人保健施設協会栄養・給食研究部会は718日、宮崎市の介護老人保健施設ひむか苑会議室で研修会を開きました。認知症と食事摂取について学びました。

 この日は県内の会員施設から24人が参加しました。研修会ではまず、同部会の船ケ山 塁副委員長が、挨拶に続き平成24年度の決算報告と平成25年度の事業計画および予算について説明を行いました。

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(説明に立つ船ケ山副委員長)

 

 続いてひむか苑の医師、田代 学先生による「認知症高齢者の食と味の認知を考える」と題した、非常にためになり、興味深い講演がありました。その内容を連載します。

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【はじめに】 

 私は介護認定審査会委員もやっているのですが、審査をする中で、鍋をガスにかけたままにしてしまう「鍋焦がし」の事例が少なからずあります。かなり鍋にダメージが及ぶまで気がついていない。なぜでしょうか?それは短期記憶障害、つまり「料理を始めた」ということを忘れるから・・・かつてはそう思っていたのですが、最近は違うのではないか?それだけではないのではないか?と思うようになりました。つまり嗅覚障害があるのではないかと思うのです。普通、鍋が焦げるあの臭いが漂えば、否が応でも気がつきますよね。その臭いがわからないから鍋を焦がしてしまうのだと。

 今日は最近疑問に思っている事で、ちょっとまとめたものを話します。

 

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(田代先生)

 

【増える認知症高齢者】

 昨年厚生労働省は、介護保険の要介護認定をもとに認知症高齢者を約300万人と推計していました。これは10年前に予測した数値より70万人くらい多くなっており、それだけ人手とお金が足りないことが見えています。さらに今年61日の朝日新聞は、同省研究班が国際基準に従って専門医が診断し、462万人という2012年時点の推計値を発表したことを1面トップで伝えていました。年齢がいけばいくほど認知症になる率は高くなります。特に80歳越えると急激に増えます。

 

【以前作ったスライドに疑問抱く】

 ご飯をうまく食べない人、飲み込めない人に対して、食事の形態や食事介助などで補おうとするのは当然です。そこに自助具や食器の工夫。それにポジショニングなども考えていかないといけませんが、もっと考えないといけないのは、環境、雰囲気。いろんなことを考えないとご飯を食べたくない、楽しくないと思います。そこでふと思ったのが、「利用者が認知できてこそうまくいく」ということです。認知できなかったらうまくいかない可能性が高いと思います。

 以前作ったスライドでは認知症者への摂食・嚥下障害へのアプローチとして、「実際には、進行期を除けば、認知症の認知症による摂食・嚥下障害はあまりない」「初期には、短期記憶障害と満腹中枢障害による食事の催促、過食が問題となることがある」「その後、問題になるのは、周辺症状(BPSD)等に対する薬物による傾眠・口腔内乾燥等による摂食・嚥下障害である」と簡単にまとめていた。しかし、本当にこれだけでいいのかな?と悩んでいました。

(つづく)

演題受付期間延長しました(重要)

 722日の「お知らせ」でもご案内しましたが、「第14回九州ブロック介護老人保健施設大会inみやざき」1114日、15日、宮崎観光ホテル)の演題受付締め切りを当初の85日から823日(金)に延長しました。発表を予定されている皆様は、「参加のご案内」の7ページから9ページの、「演題募集要項」をよくご覧の上、指定の書式および申込み方法に従い、奮ってお申し込みください。

 九州各県の老健施設から、たくさんのエントリーをお待ちしております。

研修会開きました(看護・介護部会 その5)

 このようにして、盛会裏に終わった看護・介護研究部会の研修会だったのですが、この後予想外(?)の出来事が・・・

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(閉会と同時に緒方克己先生の元へ駆け寄る参加者)

 

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(質問する参加者に緒方先生が丁寧に応じていると・・・)

 

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(あれよ(.😉・・・)

 

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(そしてまたあれよ(o)という間にこの状態!)

 

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(これはまさしく”行列のできる相談所”状態(^o^)

 

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(参加者からの熱心な質問は延々と続いたのでした。緒方先生、本当にありがとうございました

 

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(研修会が無事に終わって一息つく看護・介護研究部会の皆さん。お疲れ様でした)

 (おわり)

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