協会活動報告

高齢者の心理学びました(支援相談員部会:その5)

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 最後に高齢者の総合的評価について学びました。「高齢者の総合的機能評価(CGAComprehensive
Geriatric Assessment
)」は、(1)医学的評価、(2)身体的評価、(3)精神・心理的評価、(4)社会的評価・・・の4項目から高齢者の総合的機能評価を行い、それをもとに適正な医療やケア、そして患者と家族のQOL(生活の質)改善をはかろうというもの。

そのスライドを示した上で田代学先生は「加齢に伴う機能の変化や多くの併存病による心身機能の障害、そしてそれらの影響による日常活動の低下に伴う心身機能の障害が健康の状態を規定し、高齢者の医学的・身体的評価は、青壮年のそれとは本質的に異なる問題を含んでいます」と指摘。さらに社会的評価については「その一つの場として生活の場があります」としながら、高齢者の単独世帯や夫婦のみの世帯が増加傾向にあること、「老老介護」が進み、認知症患者の介護をする70歳以上の家族の割合がこの30年で3倍以上に増えている現状などを紹介。「高齢者の総合的機能評価は((1)から(4)の)4つが複雑に連動しており、そのこと自体も心理的影響を与えています」と言い添えながら、「重要なのは”活動と参加”を続けること」と強調しました。そしてその理由を()自分を理解してくれる人が、自分にはいるのだという実感、()自分のあり方や行為が自分一人の中で終わらずに「他者につながっている」という実感、()自分が成長している実感・・・を本人が持ち、また周りからももたれるような環境づくりをすることで「幸福感、すなわち良い心理が生まれる」と説明しました。

 また、精神医学上や心理社会的、身体的、そして社会的に高齢者が個人レベルで補償や適応することができない諸問題があることに触れ、「医療や福祉、行政関係者などの介入が必要」と受講者に呼びかけました。

 そしてサクセスフル・エイジング(成功加齢)とは、「良好な機能的能力と社会的関わりによって評価される高齢者像であり、その心理です。そのためには高い自己効力や社会参加、身体活動の継続、そして生産的活動の継続が重要です」と帰結しました。

 2時間が短く感じられるほど内容の詰まった研修会も終わりを迎え、「加齢現象とは単なる衰えではなく、それを補償する方向性も内在していることや、高齢者の心理的過程を悲観的にではなく、死の間際まで心理的成熟や社会との交流の可能性があるものとして捉えていくべきです。そして自らもそうあることを今から準備するべきです」と講演を締めくくると、会場からは感謝の拍手が鳴り響きました。

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 老健施設のみならず、特養やグループホーム関係者など、高齢者に日々接し、寄り添うことを仕事としている受講者にとって、高齢者の心理を様々な角度から考えることのできた、大変有意義な研修会となりました。田代先生、本当にありがとうございました。

(終わり)

高齢者の心理学びました(支援相談員部会:その4)

 支援相談員研究部会主催の「高齢者の心理」を学ぶ研修会。潤和リハビリテーション財団介護老人保健施設ひむか苑の勤務医、田代学先生による講義は「人間関係の加齢変化と適応」に移りました。

 

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 スライドに

(1)退職:職場を中心として人間関係、地位の喪失。伴侶にとっては、自由であった時間の喪失とそれまでの井戸端会議的な関係の縮小

(2)身近な人の死:仲間、友人、親戚、配偶者の死

(3)親子関係:核家族化老夫婦家族、独居老人

 という3つの項目を示しながら、「これらの社会的関係の希薄化からくる危機を一人の力で乗り越えることは困難で、周囲からの精神的、経済的支え、具体的な支援などのソーシャルサポートが必要」と述べ、さらに「高齢者自身も元気な時からそのようなネットワークを形成しようとする姿勢が必要で、それは若い時から必要です」と、スクリーンに「重要」の2文字を大きく浮かび上がらせて強調しました。

 続く「幸福感の加齢変化と適応」では、「多くの高齢者は加齢とともに喪失体験が増え、幸福感は低下すると思われがちだが、近年の研究では老年期の方が中年・壮年期よりも生きがいを持ち、幸福感が高いという結果が出ています」との説明に、意外な表情をする受講者も見られましたが、「高齢者は喪失感や無用感を認識し、そこから抜け出し自分の生を価値や意味のあるものとするためのものを探し、成功することで日々の充実を得ています」と付け加えると、受講者はうなずいて聞き入りました。

また「successful aging(成功加齢・幸福な老い)」という言葉を紹介。これは老年期におけるより良い適応状態を示す言葉とのこと。幸福な老いを測定し、数量化する指標”PGCモラール尺度”では元気で活動性の高い人、つまり身体的に健康だと主観的幸福感が高いとされているのに対し、「社会的健康がより重視されている」という説も増えているのだそうです。この”社会的健康”には(1)社会とのつながりがある、(2)(社会)参加している、(3)仲間がいる、(4)絆がある、(5)ソーシャルサポートがある・・・などの要因があるとのこと。そして身体的健康が低くても社会的健康が維持されている方が、身体的健康は維持されているものの、社会的健康が低い方より、「満足している」と感じている人の割合が約4倍多いと回答している研究データが示されると、受講者は社会とのつながりや参加、社会的支援の大切さを再確認していました。

(つづく)

高齢者の心理学びました(支援相談員部会:その3)

感覚機能の加齢変化と適応について、「要介護状態になる以前から高齢者の心理に影響を及ぼす加齢変化は始まっています」と話始めた田代先生。しかし「それに補償・適応しているために、結果として以前と変わらない生活を送っています。それが”サイン”とは違う”心理”。高齢者の心理を理解するためには、まずこのことを理解しなければなりません」と強調しました。

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五感である視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚のそれぞれが加齢に伴い衰えていく中で、特に視覚障害の頻度は65歳から79歳で30パーセントから徐々に増え、100歳では100パーセントになることを示しながら、「高齢者の日常生活に関する情報の減少に直結し、転倒や骨折をはじめ、社会的孤立、うつ・認知症などさまざまな問題につながる」と説明しました。

また聴覚障害やその他の感覚障害についても、それぞれの特徴や問題点を述べた上で、「感覚機能の加齢変化、特に視聴覚機能の低下にはわずらわしさと生活への影響が大きく、多くの高齢者は以前の生活の維持を求めて、おそらく無意識に補償し、それぞれに適応していますが、認知機能に問題がある人の場合は、周囲の人が見守りや介護が必要なサインを見落とさないことが大事です」と指摘しました。

 身体機能の加齢変化と適応については、「運動機能の中でも移動・歩行能力が低下すると生活空間が狭まり、外界からの刺激や対人刺激が少なくなり、精神的な活性化の機会が失われやすくなります。対人交流の頻度の減少は高齢者の閉じこもりの主な原因であり、閉じこもりは要介護状態や寝たきりの危険因子の一つとなります」と述べた上で、「杖やシルバーカーを使うことで低下した能力を補償しながら移動することは、『自分で歩きたい』という気持ち以上に、『以前の交流を保ちたい』という願望の表れです」と、高齢者が従来通りの交流や交際などの「活動と参加」を続けることの重要性を説きました。

 また感覚機能や身体機能と同じく、記憶機能についても加齢に伴い衰退するものの、これらは機能的にも心理的にもその低下を最低限にする補償(適応)がはたらくことによって以前と遜色のない日常生活を送ることができるそうですが、「それにも限度がある」とのこと。ただし意識的・無意識的に補償が行うということは、「以前通りの活動や参加を続けたいという意思であり、心理です」との説明を聞いた参加者は、介助する側がそのことを理解することが重要だとうなずきながら聞き入っていました。

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(つづく)

高齢者の心理学びました(支援相談員部会:その2)

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 加齢と老化の違いについて、加齢とは「『年をとる』ことで、受精から死に至るまでの時間の経過をいい、誰もが平等」であることに対し、老化とは「年齢とともに心身の機能が衰えていくことをいい、記憶力の低下、視力や聴力の低下、運動機能の低下などが代表的で、個人差が大きい」と話し始めた田代先生。高齢者心理学の歴史は浅く、1980年頃までは日本でも「加齢に伴う身体・社会的側面の喪失体験と心理的適応が負の関係を持つ」ことについての実証研究が支持されていたそうです。つまり、

(a)高齢になるにしたがって、退職、引退、子供の独立による生活様式の変化などによって社会的役割が変化する

(b)そのため個人の意識や行動も大きく変化し、社会からの孤立、病気や死に対する不安や恐れは加齢とともに増加する

(c)これにより、興味や意識の低下、自己防衛的受動的・衝動的な行動につながる

・・・というのが従来の考え方だったとのこと。

 これに対して近年は、「記憶力の低下は、知的能力の低下を示すものではなく、判断力や思考能力は衰えにくい」と考えられるようになってきたとのことでした。田代先生は「通念打破ing」というスライドを示しながら、「1980年以降の高齢者研究の中で、旧来の『老人は衰え、病んだ厄介な対象であり、できるだけ老いは遠ざけて若返りを狙うべきだ』とする老年学から『老いても生命力と活動力をできるだけ長く保ち、晩年の成長と自己実現の可能性をはかる』新しい老年学へ転換されている」と説明しました。このように高齢者観が変化してきた背景には、社会参加を続ける健康な前期高齢者が増加したことや、老いや病にもかかわらず、補償的に発揮される高齢者の適応力が発見されてきたことなどがあるのだそうです。

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(つづく)

高齢者の心理学びました(支援相談員部会:その1)

 (公社)宮崎県老人保健施設協会支援相談員研究部会は920日、宮崎市の宮日会館で今年度第1回の研修会を開き、高齢者の心理について学びました。

 この日の研修会には会員老健施設に加え、グループホームや特養関係者など90人が参加しました。開会にあたり、同部会副委員長の清 徳昭さん(むつみ苑)が挨拶に立ちました。

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(清 徳昭副委員長)

 研修会のテーマは「高齢者の心理」。講師に潤和リハビリテーション財団介護老人保健施設ひむか苑の勤務医、田代学先生をお招きしました。

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(田代 学先生)

メンタルヘルスマネジメント?種マスターや、認知症ケア上級専門士、認知症サポート医などの資格を有する田代先生は高齢者心理のスペシャリスト。この日は内容盛りだくさんのスライドを用いて、わかりやすく話をして下さいました。講義は(1)はじめに、(2)高齢者とは、(3)三段階の高齢者観、(4)感覚機能の加齢変化と適応、(5)身体機能の加齢変化と適応、(6)記憶機能の加齢変化と適応、(7)人格の加齢変化と適応、(8)知能の加齢変化と適応、(9)人間関係の加齢変化と適応、(10)幸福感の加齢変化と適応、(11)高齢者の総合的評価・・・という流れで進められました。

(つづく)

食に関するリハ学びました(リハ部会:その5)

【第2部 各施設での成功事例・取り組みの発表(2)

 

〔食事関連の取り組み:菜花園 理学療法士 濱砂好治さん〕

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介助用スプーンに着目して、6種類のスプーンを用いどれが1番よいのか検討を実施した事例の報告がありました。6種類のスプーンはそれぞれ、中華スプーン・ティースプーン(柄に加工があるもの)・ティースプーン(先端が平たく直線)・デザートスプーン・スープ用スプーン(丸型)・中華スプーンを用意。回答方法として、介護スタッフよりそれぞれを使用していただき食事介助がしやすいスプーンの順位を回答していただく。それぞれのスプーンの利点および欠点を記載していただく。介護者側からの意見が主になります。

さて、第1位はスープ用スプーン(丸型タイプ)でした。大きさは適度で深さがあり汁物も飲ませやすい、食べこぼしがほとんどなく主食、副食ともに使いやすいという意見があがりました。ちなみに、第2位はティースプーン(柄に加工があるもの)、第3位はデザートスプーン、第4位は中華スプーン、第5位は中華スプーン、第6位はティースプーン(先端が平たく直線)でした。現場職員のコメントを総合すると適切な介助用スプーンの特徴としては、適度なスプーンの大きさ、適度なスプーンの深さ、適度な柄の長さ、適度な角度、先端の形状、食事形態による考慮が考えられ、様々なスプーンを用意して使用してみることが大切であると思います。

食事環境の検討について、食事姿勢であったり介助方法であったり、食事形態の見直しであったり、食事環境(箸、スプーン、テーブル、椅子など)だったりと多職種協同して原因を探り、総合的にみていくことが最終的には誤嚥性肺炎のなどのリスク軽減につながると考えます。

百聞は一見にしかず、百聞は一行(行動)にしかずということが大事で、一度実行してみないとわからないことがあります。実行して失敗しても前には進んでいるわけなので、いろんなことを皆と実行することが老健では大事なのかなと思います。食事介助とは排泄、整容、入浴、更衣の中では命に係わる介助であるので、根本的にしっかりリスクを見落とさないようにみんなで取り組む部分なのかなと思います。

 

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〔座位バランスと起居動作:グリーンケア学園木花 理学療法士 前田明人さん〕

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どうして座位バランスがとれなくなってしまったのか、何かしらできるものがあるのではないかという観点から話をいただきました。移動するための手段である車椅子はしかたなく食事とかアクティビティーに使用しているわけだから、工夫がいるんです。車椅子の座面はハンモック状になっていますので中央付近に体重がのってきます。1時間ぐらいじっとしているとおしりの真ん中が痛くなります。そもそも座位保持装置としての機能ではないんです。

座位の姿勢崩れの代表的なものは前方への滑りが挙げられます。仙骨座りです。また、それと同時に側方への傾斜が加わった方がたくさんいます。だいたい右利きの方は右に崩れます。崩れた状態からまっすぐ元に戻ろうとしたとき、どこのどの筋肉がどのように活動して戻れるのか?を考えた場合、非常にわかりやすかったのが、起居動作で主に関与する筋群がすべてです。抗重力的かつ高出力で使用される筋群、、、、つまり、腹直筋、内外腹斜筋、腹横筋、腸腰筋、上肢伸筋群などです。

では、起居動作はどういう動作でしょうか。寝返りから頭を起こし重心を前方にもってきて、肘を付き体重を乗せ、身体を起こして肘から手を伸ばし端座位になる。これら一連の動作のどこができてどこができないのか注意深く分析をしていかないと、座位の崩れを作ってしまうことになります。

頭を上げる所(head up)から肘に体重を乗せる為身体を前方に落とす(on elbow)ことができないかたが多い。セラピストはここにアプローチすることが必要で、一連の動作のどこができてできないかを注意深くみて介助することが大事。起き上がり動作一部介助と聞いたらたぶんここだろうなと思って、手伝いあとは様子をみるとできると思います。

起き上がり動作は、ずいぶん昔の話ですが、廃用症候群が一番の確立で起こるのはどこかと調べた結果、第一位は老人保健施設だったそうです。病院では手厚くリハビリされよかったのか、老健施設ではレベルが落ちる方が多かったそうです。特別養護老人ホームではレベルが落ちる所まで落ちて入所されるので落ちないそうです。老健で機能を落としてしまう。

どうして落とすのか考えると、例えば起居動作が自立されていた方がいるとします。しかし時間がかかる。当然高齢者ですからそういう方が多いです。だから介護者は時間的制約から手伝いますよと言って手伝います。そうすると、ご利用者はありがとうと声をかけてくれます。介護者はいい事をしたと勘違いしますが、これがえらいことになります。

その方のたくさんの筋群を使う場面を奪ってしまう。いわゆる過介護になり、これを続けていくと全介助になってきます。つまり、一生懸命に頑張って動作している方が大変そうだと手伝うとすぐ全介助になり、全介助が続くと座位保持する為の筋力が奪われてくることになります。その結果いろんな工夫がかえって必要になってきます。そういう状態を作ってしまうので、起居動作の自立の方、一部介助の方もどこをどのように介助するのか分らないとなれば、すぐ全介助になりますし、どう介助すればいいのか分らない一部介助はほとんど全介助ですから、そうならないように起居動作介助のリスクをわかって下さい。

また、ベッド上での寝返るスペースを確保する、on elbow-ができるように柵をとってみるなど試して下さい。10名中6-7名はスッとできるようになると思います。

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(おわり)

食に関するリハ学びました(リハ部会:その4)

【第2部 各施設での成功事例・取り組みの発表(1)

〔食事姿勢の成功事例:ひむか苑 理学療法士 菅原展寿さん〕

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車椅子をみていくポイントとしては4つあるかと思いますが、○バックサポートの角度○座面の高さ、幅、奥行き○アームサポートの高さ○フットサポートの位置になります。今回はアームサポートの高さを調節したことで座位姿勢が安定した事例を報告したいと思います。アームサポートの高さを合わせるとは、肩が上がらず、肘が直角にきちんとアームサポートにつく高さに調節することが基本となります。

今回の事例では脳梗塞により、左側片麻痺を呈した方。ADL能力として移動は車椅子レベルで入浴以外はほぼ自立レベル。(車椅子駆動は右側上肢を使用し移動に夢中になると体幹の左側への偏移がみられている。)

この方に対してアームサポートの高さを3cm高くしたところ(今回の事例では座クッションを抜いて結果3cm高くなる)車椅子駆動時や食事時に姿勢崩れが改善された。

アームサポートの高さを調整することで体幹が預けられ筋力低下を補ってくれたのではないかと判断。基本は基本で抑えないといけないが、座位の高さを調整することなど本来であれば基本から逸脱したやり方だが視線を変えると結果も変わってくるのではないかという事。柔軟な目線や考え方が重要ですよ。

 

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〔食事姿勢の基本とケアの統一:こんにちわセンター 理学療法士 中村豪志さん〕

 

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介護現場での声として、ケアの統一が難しい・初めはできていても、いつの間にかされていない、などあがってきます。なぜケアの統一は難しいのか考えてみると、介護現場では食事だけでなく、排泄、入浴、事故など多くを対応しないといけなく、あまりにも多くのことを実行しないといけない。ケア統一のコツとしては、誰がやってもできる事、シンプルで長続きできる事、お金がかからない事が考えられます。充実したケアをするためには、ちょっとしたひと手間をかける事を惜しまない。例えば車椅子フットレストから足を下ろす。ちょっと姿勢が崩れている方を直す。洋服がみだれているのを直すなど手間をかけるのを惜しまない。それを持続する意義を理解し、専門家として責任を持つ。つまり意味を理解しないままだと長続きしないので、なぜそれが大事なことなのか、将来的にどうつながっていくのか理解してプロとして実行して行く事が大事であると思います。

ケアの統一をしていく為には段階があると考えます。第1段階としては、簡単かつ安価で多くの方に適応できる方法を考える。第2段階として関係職員にその方法の意義を理解してもらう。第3段階として常に実施できるような統一方法を考える。これら全段階を経てケアの統一が長続きすると考えます。

以上を踏まえ、食事に関して当施設で取り組んでいる例を挙げてみます。食事の適切な姿勢として足底が床や台に設置している事。座面に対して体幹がほぼ垂直である事。頚部が軽度前屈できる事を理解し、車椅子での姿勢を考えますが、ニトリで購入したクッションを背あてとして、固めを使用し、できるだけメーカーや種類を統一します。漫画週刊誌などを布テープで巻き簡易足乗せ台とします。利用者に合わせて、いろんな高さの台を作ることができ、コストも安く、資源を有効に利用できます。意義を理解し継続する為に食事ケア統一シートを作成し、視覚で確認できるように個別の写真を撮影し注意点を掲示し、食事前にテーブルに配布して全職員が統一できるようにしています。

大切なこととして、当たり前のことを、手抜きせずにやり通すこと、専門家として責任を持つことが大事であると考えています。

(つづく)

食に関するリハ学びました(リハ部会:その3)

麻痺があり嚥下障害のある場合のポジショニングでは、頚部は軽度前屈位で麻痺側へ回旋する。(45度くらいでうなずく姿勢にします。健側の咽頭の通過をよくする広げる為に回旋します。つまり咽頭の部分がしっかり食道に通るようにする為です)。体幹を麻痺側が前方へ出るようにします(重力を使い健側側に食塊が落ちるようにします)。嚥下させた時など食塊が咽頭につまっていた場合など方法の一つとしても用いますので参考にして下さい。

 

食事の摂取・介助方法ですが、お膳の配置の工夫をします。片麻痺の利用者で自力摂取可能な方には、すべり止めシートや介助皿の活用を行い、手掴みで食べられる利用者には、おにぎりなどに変更する工夫も大切です。

食事の介助方法では、食事の準備期の段階でご飯を食べるということを認識していきましょう。匂いや料理をみてもらうことが大切です。また、ご飯がきましたよとなどの声掛けを行うことで、食事の情報が入り、食事に意欲がむきます。

 

同じ目線で介助します(目線が高いと誤嚥し易くなる)。顎を引く様に介助を行う。(誤嚥を防ぐ)。介助する側の手で介助を行う(右利きの人は右側からの介助できる環境に)。嚥下したことを確認して話しかける。(誤嚥を招くため、嚥下してから話しかけましょう)。

 

また、正面からスプーンを入れて斜め上方へゆっくり抜くこと。送り込みが困難な場合は奥舌に入れる。口腔内残留を確認して介助を行う。声を出してもらうことも一つの嚥下確認となります。

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食事終了後の姿勢として、食後の時間をベッド上で過ごす場合は、ベッド角度45-60度に調整し、疲労などで座位保持が困難な方でもできれば30分は臥床しないようにしましょう。

嚥下したものが食道に逆流して誤嚥性肺炎を起こす恐れがあるので、ご飯を食べた後の姿勢にも注意をしていただければと思います。

 

自助具の使用方法ですが、把持が難しい方には、太柄のスプーンの検討を行いますが、持ち方や食べ方、手首の調返しが難しくなる例もあるので、柄を曲げたり先割スプーンだったり、ユニバーサルスプーンだったりいろりろ選択して検討して下さい。お皿の工夫としても視空間認知障害がある方などが使用するのに便利なお皿(仕切りの工夫がある)選びも大切になります。

環境を整えることも大事で、半側視空間失認、や注意障害がある利用者に対しては刺激を少なくする環境を作り、テレビなどの音を消したり人の動きが多いところは避けたり食事に集中できる環境を作ってあげましょう。認知症のある利用者に対しては、食事の拒否が多く3回の食事ができないこともあります。高カロリーの食事に変更するなどの対策をとることも大事です。道具の使い方がわからない利用者で食事が入らない場合は食べ物をのせたスプーンを渡して自分で食べてもらうなどして道具の使い方を覚えてもらうなどして、利用者にあわせた食べ方を選択してみて下さい。

 

まとめとして、今回は姿勢について中心に話をしましたが食事ケアは姿勢以外にも嚥下・咀嚼・食形態や口腔ケアなど他にも多くの要素が関係していきます。多職種との協力のもとに施設での食事についてもう一度考えてみてもらうと良いと思います。また、環境に関しても施設でどう取り組んでいくのかの話も大事になってくるかと思います。

(つづく)

食に関するリハ学びました(リハ部会:その2)

椅子・車椅子での姿勢のポイントとして(1)足底をつける。(大腿部を平行にし、膝の角度を90度にした状態で床につける。足底をつけることで、体重がかかり筋肉が緊張することで覚醒が促される。咀嚼での噛む力が発揮される。)ことが重要になってきます。(2)前傾を促す。(体幹の前傾を促すことで、体重が足部にかかる。約5度の前傾姿勢が適しているとも言われているが、人によって角度が違うので調整が必要です。円背姿勢の高齢者の方々は前傾姿勢を保持することが難しいことを念頭にいれてみていきます。

体幹だけでなく、頚部の位置も重要で、軽度のうなずきの姿勢が必要です。

(3)テーブルの高さも重要で前腕が自由に動かせる位置が良い。おへそより若干上ぐらいがベストで、ご飯が見える位置であることが必要です。(4)椅子の高さも重要で足底がしっかり地面につくことが必要です。また、左右幅や奥行き、高さなどの使い方が重要。

 

リクライニング車椅子での食事姿勢では、頚部の前傾を促す、腰部の位置と車椅子折れ曲がり部分をしっかり合わせる、膝を曲げるなど関節を車椅子に合わせましょう。

 

古い車椅子などを使用している場合は、座面部のスリングシートが大きくたるんでいる事が多い為、座面にクッションを使用することが必要です。また、奥行きが大きすぎる為、バックサポートにクッションなどを入れるなどの対応が必要です。?左右の崩れに対してはクッションなどで倒れないようにします。骨盤からしっかり直してクッションを使用しましょう。骨盤から直さないと姿勢がまっすぐになっていない状態があります。

(6)   仙骨座り ポイントとして奥行きとフットレストの高さ。大腿の長さより奥行きが長くないか?体重が大腿部にかかっていないとずれていきます。食事の時はフットレストを外して、しっかり足底がつくようにしましょう。

ベッド上での食事姿勢として、(ア)覚醒を促すこと。覚醒を促す足底をつけることで、体重がかかり筋肉が緊張することで覚醒が促される(枕、クッションを活用)。覚醒を促す為に、臥床後すぐの食事は避ける(食事30-40分前にはベッド頭部を起こしておいて覚醒促す。しっかり起きているか確認)。(イ)前傾を促す(頚部) 頚部は軽度前屈位にする(誤嚥防止の為に下顎と胸の間に3-4指あけると、咽頭と気管に角度がつくため誤嚥しにくいので枕などで調整する)。ギャッジアップは状態に応じてですが角度は30-60度にします。下腿の座面はずれ落ち防止のために支持基底面をふやすということで、膝下の形状に合わせて丸めたタオルなど入れると支持面が増えて安定します。

ベッドの起こし方も腹圧に注意するため下肢部分からあげて、頭部をあげていくと負担がかかりにくくなります、また麻痺が有る方の場合は上肢前腕部など姿勢が崩れ負担がかからないようにクッションなどおき工夫しましょう。001IMG_7710.JPG

(つづく)

食に関するリハ学びました(リハ部会:その1)

 (公社)宮崎県老人保健施設協会リハビリテーション研究部会は920日、宮崎市の宮崎リハビリテーション学院で今年度第1回の研修会を開きました。会員施設等から様々な職種の65人が参加し、食事に関する様々なリハビリテーションの技術・知識について学びました。

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(開催に先立ち挨拶を行った、同部会の中村豪志委員長)

1部はサンヒルきよたけの作業療法士長友太志さんから「食事姿勢・食事ケアの注意点」と題し講義をいただきました。また、第2部では各施設での成功事例・取り組みとしてひむか苑の理学療法士菅原展寿さん、こんにちはセンターの理学療法士中村豪志さん、菜花園の理学療法士濱砂好治さん、グリーンケア学園木花の理学療法士前田明人さんから発表がありました。

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【第1 講義 「食事姿勢・食事ケアの注意点」】

〔講師:サンヒルきよたけ 作業療法士 長友太志さん:下の写真〕

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《講義の概要》

 

まず食事とは?というところで、目・匂い・味と五感をはたらかせるもの、栄養摂取、水分摂取、家族や友人や同じ時間をみんなで共有する場などではないかと思います。

では、食事は要介護者にとって大きな楽しみのはずですが、施設のなかではどうでしょう?みなさん食事を楽しんでいますでしょうか?介護者のペースになっていませんか?栄養や水分の確保という目的もありますが、やはり生活の場面で求められているのは、おいしく味わってしかも安全にということではないのでしょうか。では、どのように考えていけばよいのかという事になります。

老健施設では、生活行為の中での食事は、残存機能を生かした自立への介助方法を心がけていくことが大切です。その為、食事に関わる多職種の連携が重要になってきます。

 

食事姿勢や環境設定についてですが、まず知らないといけないのは摂食嚥下段階です。

(1)   先行期(認知期) 感覚機能を使って食べ物の情報(匂い、色、温度、形態等)を集め、食事体験に照らし合わせて、咀嚼嚥下器官をスタンバイする。唾液の分泌を促す。

(2)   準備期 食物を口腔内へ運び、食べ物を口腔に取り込み、前歯で噛み切り舌の前後上下左右運動により食物の状態に応じて噛み砕き、飲み込みやすい形状(食塊)にする。

(3)   口腔期 咀嚼されて嚥下可能になった食物(食塊)を咽頭に送り込む段階。口唇を閉じて、下と口蓋との間の圧迫圧で後方に送り込む。随意的な運動から不随意的な運動に切り替わる時期である。

(4)   咽頭期 咽頭に入った食塊を気道を保護しつつ食道まで送り込む段階。

喉頭蓋は喉頭の上方運動によって後下方へ転倒し、気管口を閉鎖して誤嚥を防止する。食道口は閉じているが、協調運動に支えられ、約0.5秒間というわずかな時間だけ開口する。

(5)   食道期 食塊が食道に入り、胃に送り込まれる時期で、液体では約3秒、固形食では8-20秒かかる。

 

この先行期(認知期)から食動期までをふまえ、食事姿勢について話します。

まず、座位について安定した姿勢と能動姿勢では、骨盤が前傾、上肢の動きがでてくるので能動姿勢が食事時には大事になってきます。

(つづく)

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